第7話 うつみ駅

職場の飲み会があった日の事だった。

運よく週末での催しとなり、最終列車の時間までゆっくりと酒に肴に楽しませていただいた。

と言っても地方都市と田舎町をなんとか繋いでいるような赤字路線だ、22時過ぎにはもう最終だ。

シンデレラだって踊り足りないだろう。

もう少し飲んでいたかったものの、翌日には用事があり泣く泣く帰路につくことにした。

せめてもの抵抗とばかりに帰りしなにコンビニで二本ほど缶酎ハイを買って。


向かう先は僻地のようなものだ、流石の最終列車であっても一輌編成である。

たった一輌しかないものの、社内はまばらにしか乗客はいない。

これならさほど迷惑も掛かるまいとさっそくちびちびを缶酎ハイを遣り始める。

しばらく経つと列車のコトコトとした揺れも相まって、段々と眠気がわいてきた。

酒も入っているため、このまま心地よく目を閉じたいが寝過ごしてしまっては大変だ。

眠気を紛らわすため、ふと窓の外を見る。

既に列車は街を抜け、塗りつぶした夜に点々と民家の明かりが見えるだけになっている。

進めば進むほど明かりの間隔は延びてゆき、窓の反射に自分を見るほどになった。


「間もなくうつみ駅、うつみ駅です。ご降車の際はお忘れ物にご注意ください。」


車掌のアナウンスが聞こえる。

それと同時に、大きく子供の泣く声が社内に響いた。

時間も時間だ、うとうとしていたタイミングで聞こえたアナウンスにでも驚いたのであろう。

しかし、不思議なことに泣き声が近づいてくる気がする。

車輌の前方から段々と、いや、間違いない。

小学生くらいだろうか、まだ幼い少年だった。

泣きながら車内を前方から後方に、泣きながら歩いていた。


直後、駅に到着しドアが開いた。

少年は泣きながらその列車を降りた。


一人で。


酒に酔っていたのかもしれない、眠りに落ちる前に見る支離滅裂な風景だったのかもしれない。というのは言い訳だろうか。

私は動けずに、視界の端で捉えているだけだった。


きっと親が駅で待っていたに違いない。そう思うことにした。

でなければ、あんな暗い場所に、あんな子供が。


少しでも自分を納得させるべく、窓から駅を覗き込む。

窓には自分が写るばかり。外はまだ、夜一色だった。



きっと塾や習い事があったのだろう。親が待っていたに違いない。それでも流石に子供だ、寂しくなって泣いていたのだろう。

私は罪悪感を飲み込むために、自分の中で辻褄を合わせることに精一杯だった。

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