第4話 きゅうざき駅
ここは私が利用する路線の中でも数少ない有人駅の一つであり、私の毎朝のゴール地点であり毎晩のスタート地点である。
主要な施設や学校、オフィスもこの駅の周辺にあり県内の人間が北から南から集まるランドマークでもある。
勿論都会のそれとはだいぶ規模が小さくなるけれど。
私はもう十年以上この駅を利用しているのだが、東口のベンチに決まって座っている老齢の女性がいる。
決して少なくない人が行き交うこの駅で、決まって同じベンチに。
ただそれだけであれば毎日決まった時間に出る列車を待っているのだろうと思うだろう。
見た目での判断とあり申し訳ないが、お年もお年なのだろう、バスか何かで駅まで来るのであれば当然待ち時間も長くなるものだろう。
だが不思議なのは、どの時間にも彼女がいるのだ。
車両トラブルなんかで遅刻してしまった朝も、早退してきた昼も、飲み会で最終になった時も。
もしかしたら自分にだけ見える、このベンチの地縛霊なのではと考えたこともあった。
しかし、着回しはあれど毎日違う服装である。
最近は幽霊までもお洒落をするトレンドでもなければ、やはりご存命なのだと思う。
そこでまた私は首をかしげるのだが、着替えるということは定期的に家に帰っているということだろう。
では何故彼女は毎日、あそこに向かいただただ座っているのだろう。
たまたま私が遅刻・早退・飲み会だった時、タイミングよく何かを待っていたのだろうか。
そんな偶然は果たしてあるのだろうか。
と、ここまで書いてみたものの実は私は最近彼女を見ていない。
もう、数か月、あのベンチで、あの駅で。
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