見目麗しきグラトニー③
割が良いからと彼に紹介されたバイトを、申し訳ないけれど一日で辞めたことがある。詳しくは思い出したくないがキャッチセールスで女の子に声をかけるバイトだった。
「渉に向いてると思う!」と修ちゃんが無邪気に言ったのは恐らく間違えていなかった。業績だけで言えば向いていたんだと自分でも思う。たぶん修ちゃんには人を見抜く才能がある。かもしれないが、何にでも良くも悪くも相性というものがある。それ故に見抜かれなければ幸せだったという場合も多いのではないか。この件に関して言えば最悪に相性が良かったのだろう。自分には二日と耐えられなかった。
あるいは単に人と親しくなるのが得意という面から見えた結果なのかもしれない。知り合いの人数という分母が常軌を逸しているからアタリも多いというだけで、数撃てば然り。どちらにしても修ちゃんには悪気なんてこれっぽっちも無いし、なんなら善意ですらあるのだから
でもあの悪魔のおかげで一花と蕗と、真ちゃんにも出会うことになった。修ちゃんは人を引き合わせるのも上手いのかもしれない。
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「渉くん、これ食べない?」
「食べる」
腹が減っていたけれど今日は酒も飲まないし時間も限られている。各々で好きなプレートを頼もうかと蕗と話して、一花が来るまで料理の注文は待ってもらうことにしていた。プレートって何だよ。どういう状態だよ、とも思う。飲食店で働いていても飲食店に行く機会なんてあんまり無いんだ。
スコッチエッグがどうとか想像もつかなかった。何やら場違いな店に入ってしまった気もする。雰囲気の良い店だった。だからこそ居心地の良さに違和感を禁じえない。でも蕗の指先が押さえるフライドポテトの写真は気になってた。鉄板に盛られたバターとニンニクの何とか。なんだかよくわからないがポテトと言われると親近感が湧いた。
「すいません」
蕗が指を鳴らして声をかけるが店員さんは気付かない。第一声の届かない、このいつもの光景に思わず鼻から息が出てしまう。「笑うな」と蕗が俺の手を拳でドスンと叩く。いてえ。大道具さんだった蕗は力が強い。
それから手を上げて曲がった指もピンと伸ばして「すいまっせん!」と声をかけるとすぐに気付いてもらえた。蕗が注文するのを聞きながらマグカップに口をつける。口が悪いくせに、こういう時は感じよく喋るんだと感心する。
アップルティーなんて飲むのは初めてだ。お
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