第5話 妹と別れて…………
帝国ホテルの外で李菜と別れる。
「ちょっと、煙草を吸ってくるわ」
「あっ、私も………でも喫煙ボックスはここから歩くんじゃないの?」
そしたら相沢が俺を窺ってくる。
「だからさ、ホテル行く? そっちの方が早いでしょ」
俺は息を飲んでしまった。
「どうせ、期待しているんでしょ?」
まあ、変に取り繕わないでもいいか。ここは、そんな男の性欲に従おうじゃないか。
「まあ、その、そうだな」
そして、千代田区から一番近いラブホ街へと向かった。
そこは、風俗街。ラブホ街などが軒を連ねる歓楽街だ。
とあるラブホのエレベータで上階へ登り、室内へと入る。
そこのベッドに腰掛け、メビウスの一本に火を点ける。相沢もそうしていた。
「妹さん、純真無垢ね。すっごく可愛かった。いくつなの?」
「今年で十三歳だよ」
「まだまだ子供ね。大切にしてあげなさいよ」
「もちろんだ」
相沢は備え付けの灰皿に煙草をすり潰し、俺にキスをした。舌を絡めながら、器用に俺は同じように煙草を捨てた。彼女の服を脱がしながら、どんどん昂ってくる性欲を感じながらその感情を相沢にぶつけた。乱暴すぎる情事は、時にドメスティックで、バイオレンスを影に隠すものだ。
深夜四時頃、目が覚めた。
スマホを手に取り画面を開くと着信が五十件ほどもあった。全て妹からだった。少し恐怖を感じた。
『朝帰りだけは赦しませんよ』
俺はすぐに起き上がり着替え始める。するとその際の物音で目が覚めた相沢。
「どうしたの?」
「李菜が早く帰ってこいってメールを寄越してきたんだ。ちょっと色んな意味で怖いから帰るわ」
「まさかだけど…………妹さんと二人暮らしってわけじゃないわよね?」
俺はベルトを締めながら首肯した。「その通りだよ。妹と二人暮らしだ………って、枕を投げてきてどうした?」
「この馬鹿! あなた保護者代わりでしょ。まだ十三歳の子供を家に置き去りにするだなんて考えられない」
「そんな悪いことか?」
「あなた、教師を目指しているんでしょ。そこら辺の常識どうなっているのよ!」
「すまない……」
確かに、言われてみればその通りだ。良識に欠けた行動だったと思う。
すると相沢も布団から出て鞄から財布を取り出し、そこから三万円を引き抜いた。
「これだけあればタクシー代も足りるでしょ。帰りにコンビニでも寄ってプリンでも買いなさい。女の子は甘いものに弱いから」
「ほんと悪い。次会ったときには返すから」
そう言葉を言い残し、ホテルを後にした。
駅前のタクシー乗り場で、タクシーを拾って帰宅する。
自分の行いを猛烈に反省した。
◇
タクシーから一度降りて走って近所のコンビニに入り、急いでプリンを購入する。
自宅のアパートの部屋に入ると、リビングの机に頬を張り付け、眠っている李菜がいた。
俺はそんな李菜の髪を撫でて、それから側にプリンを置いた。
「悪かったな」
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