第6話 お兄ちゃんとの戯れ

 翌朝。大学に行くためにベッドから身体を起こそうとすると、腕を捕まれた。布団に押し倒される形になる。倒したのは李菜だった。

「お兄ちゃん………昨日、すっごく寂しかったんだよ」

「それは………すまない」

「反省して私とエッチしてください」

「……………すまん、いまなんて?」

「だって、あの女とはしたんでしょ?」


 妹はムスッとしている。頬を膨らませ必死に訴えかけているのだ。


「あのな、あの人は俺の恋人なんだ。それにそもそもお前は俺の妹だろ?」

「………反応しちゃってるのに?」

「反応しとらんわ。変な言いがかりはよしてくれ」

「じゃあこの布団の上からもっこりしているのは?」

「部分的に俺の足だ」

「本当かな? 触って確認してみても?」

「駄目に決まっているだろ。妹に俺の“神聖な部分”を触ってほしくはないわ」

「お兄ちゃん……」


 妹が少し侮蔑のこもった目で見つめてきているのは気のせいか?


「そこのことを神聖な場所とか言うのはちょっとイタイよ」

「……そうだな」

 まさか、李奈に諭されるとは。思いもしなかった。

「ごめん、ふざけすぎた」

 そしたら李奈が俺に抱き付いてきた。

「そんなお兄ちゃんも可愛いです」

「頼む……離れてくれ」

「あと一時間はこうしていたいです」

「俺もお前も学校だろ? 遅刻したら怒られるぞ」

「一応言っておきますけど、ご飯なら出来てますよ」

「それを先に言ってくれ」そう言いながら強引に起き上がる。

 リビングに入ると味噌汁の良い匂いが漂ってきた。

「今日はナスの味噌汁ですよ」

「ナスかあ」

「えっ、ご不満?」

「いや、ナスは大好きだよ」

「私のことは?」

「……誘導尋問には引っかからないぞ」


 席に座って妹が茶碗に入れてくれた白米と、そのあと熱々の味噌汁。納豆などを妹が出してくる。

 それを食しながら妹に訊ねてみる。

「そう言えばさ、お前は学校とかで好きな人とかいないわけ」

「お兄ちゃんみたいな浮気性じゃないから」

「いやいや、別にお前と交際とかしていたわけじゃないだろ。いつまでもお兄ちゃんお兄ちゃん言ってるといつの間にかおばあさんに……」

 そう言うと李奈の瞳が潤み始めた。

「ってどうした、そんな涙目して」

「お兄ちゃんの鈍感野郎!」

 李奈が食事そこそこにも自室へと入っていく。

「鈍感って……それはお前だろ」


 俺たちが交際なんかしたら、世間が許さないだろ。それを気付かないなら、鈍感はお前だからな。 

 溜息を吐いて、納豆を掻きこむ。


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