第16話 薬研堀の死闘
数馬は道太郎を訪ね加納久通の
「そうか加納様は大久保様を許されなかったか」
道太郎は加納に対する
「
数馬が加納を『殿』と呼び素直に
「して加納様が言われたように大久保様のお屋敷に討ち入るのですか」
吉乃が心配そうな
「いくらお許しが出たとしてもそういう訳にはいかぬだろうな」
道太郎が考え込むと数馬も、
「殿は
と、
考えた末に道太郎が口を開いた。
「いっそのこと幽霊屋敷に
「
吉乃が驚いて言った。
「此処ならばいかにも刺客から身を隠しているようではないか」
「吉乃さんはどういたしますか」
数馬は吉乃の身を案じた。
「うむ、その間は勝五郎に頼むとしよう」
翌朝、数馬は吉乃と連れ立って
「香月殿、貴殿には
源之助は今にも泣きそうな顔をしている。
「昨夜江戸屋敷からご
「そうですか、それは上々。加納様は早速
数馬が
「昨日の内に国元へ
瑞江も感情が
「これで瑞江様も
微笑む吉乃に「はい」と、笑顔で答えた瑞江は吉乃に近づくと耳打ちした。
「吉乃様も本来のご身分を取り戻す前に、本当の幸せとは何かお考え下さい。そしてその時が来たら
吉乃は
「お世話になりました。どうぞお元気で」
瑞江が深々と頭を下げた。
「源之助殿、我らは本物の友ですぞ。大口ではござらぬよ」
数馬の言葉に「かたじけない、必ずまた会いましょう」と、源之助は力強く言って船に乗り込んだ。
「瑞江様~わたくし勇気を出します」
吉乃は手を振りながら大きな声を届けた。
そして午後、道太郎の姿は大久保屋敷にあった。用心棒をしている両替商の
道太郎はこの機会を逃さず、主人を待つ間に屋敷の
「
道太郎は父娘という言葉を特に
(仕込みは上々、後は動きを待つのみだ)
道太郎の
庭に忍ぶ者の
「父上、上様とのお
「うむ、お取次様に確認したら明日は忙しいため明後日となった」
戸口の
「その時は大久保様の
「さりとてこれは上様に対する
外の気配がすっと
「行ったようだな、これで間違いなく明日の夜には
道太郎は吉乃を数馬に
数馬は浅草への道すがら道太郎のことを考えていた。
(今夜、敵を
数馬は真顔で吉乃の目を見つめた。
「たとえ我らが倒れたとしても、加納様を通して上様とのお目通りを叶えてください。それが父上の悲願ですから」
吉乃は目を
「いやです。
勝五郎は数馬の
「
数馬は部屋に
人を斬るのは初めてであった。
(恐れを抱かず、
腹が決まると数馬は浅草を出た。「まずは腹ごしらえですよ」と、しずが
薬研堀の家には道太郎が戻っていた。
「今しがたまで様子を見ていたのだが、大久保屋敷では根来衆が
「
数馬はしずに持たされた握り飯の包みを開けた。
敵の
道太郎と数馬は一睡もせず辺りに注意を張りめぐらせていた。
道太郎はあらかじめ草地の中に枯れた小枝を
「出るぞ、数馬は此処で敵を待て」
道太郎は言い残して引戸から
「娘は中だ、
最後尾から茅野竜膳が叫び、鬼蔵は
塀の上の
数馬は室内から雨戸を少し開け、隙間から
塀の上の射手が胸を射抜かれて落下すると、鬼蔵は残りの忍び三人に室内に入るよう指示を出した。
三人の忍びは雨戸を
鬼蔵は手ごわい道太郎に戦力を集中させていた。
その道太郎はすでに四人を倒したところで投げ
数馬は縄を持つ忍びに室内から矢を射って道太郎を自由にした。
「先に娘を殺せ」
鬼蔵の命で道太郎から残りの忍び半分が離れた。忍びたちは混乱していた。
たちまち庭の忍びは道太郎に討ち取られ、室内に飛び込んだ者は数馬に討たれた。
それを見た道太郎は「出るな!」と
煙に
発射音と共に倒れたのは、数馬の
「父上!」と叫んで走り寄りながら数馬は小太刀を抜いて投げた。
「ぎゃっ」という声を上げて鬼蔵が倒れた。切れ味の鋭い小太刀は鬼蔵の胸に根元まで刺さり
茅野竜膳の姿はとうに消えていた。
家の屋根が焼け落ちて穴が開くと火は一気に燃えあがった。
浅草では勝五郎たちが
吉乃は数馬の
「お頭、火の手が上がりました」
子分の知らせを聞いた勝五郎は「いくぞ!」と
火消し衆は
現場に着くや勝五郎はすぐに
火事の方は幸い周囲が墓地や寺の
火事だと思って路地に集まった町人たちは、
そしてその中心に力なく膝をついてうなだれた数馬が血に染まっていたのである。
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