第15話 加納の采配
品川からの帰り道、数馬は別行動をとるため
「仇討ちにおける最後の
突然の数馬の申し出に何のことやらわからぬまま「それは構わぬが」と、源之助は
数馬はその足で加納久通を訪ねた。
加納は数馬の
「どうだ数馬、姫の行方はわかったか」
「ご報告が遅くなり申し訳ございませぬ。その後、
「火事だと、姫は無事であろうな」
数馬は慌てて説明不足を
「姫様は上様の一字をいただき吉乃という名でございました。江戸への旅の道すがら知り合った
加納はみるみる笑顔になり「
「して暮らしぶりはどうであった」
「紀州では刺客に追われて山中の山小屋で暮らし、父の
加納は目を閉じ
「上様のお子に生まれながら苦難を
「されど吉乃様は
加納の閉じた目から涙が
「道太郎は何故わしを頼って来ぬのだ」
数馬はいずれは話さねばならぬことと腹を決めた。
「それは、殿のご
「どういうことだ数馬、
数馬は畳に手をつき
「姫様暗殺の
と、告げると一気に加納の顔から血の気が引いた。
数馬は話を続けた。
「きっかけは
加納は肩を落として
「
加納の吉宗に
「数馬、そなたに直接
「はい、承知
「心得た。大久保屋敷に討ち入っても構わぬがすべては
命を受けた数馬がなかなか帰ろうとせずもじもじするのに加納は気付いた。
「どうした、まだ何かあるのか」
「はい、お願いの儀がございます」
「申してみよ」
数馬は仇討ちの件を持ち出した。
「実はわたくしの長屋に
「何ということだ、また
「たまたま娘が
数馬は橋本家に起こった
「
数馬は預かった仇討ち赦免状と代官所の証明書を見せた。
「そなたの旅装束を見て不思議に思うたがそういうことであったか。して願いとは」
「はい、橋本兄妹がこのまま帰っても
加納の顔にやっと明るさが戻った。
「わかった、
加納の笑顔を見て数馬はほっとした。
(殿は大久保様のことで心を痛めておいでなのに、殿こそ優しいお方ではないか)
数馬は加納に仕える喜びを感じていた。
加納久通は江戸城内の
「本日は頼みたいことがあって来てもらった」
「お
家老は硬くなって尋ねた。
「佐倉藩に関わることだが、今や藩主
家老は
「わしの配下の者が縁あって
加納はそう前置きしてから数馬の報告の内容を伝えた。
「藩主が老中として忙しく働いておる
加納が語気を強めると家老は慌てて畳に手をつき
「そこでな、そなたより
「ははっ、かしこまりましてございます」
そこで加納は再び表情を
「これは
「
家老は顔を上げずに平伏したまま答えるのであった。
その晩、
兄妹は数馬が手を回してくれたのだと喜びすぐに家を訪ねたがあいにく数馬は留守だった。
「兄上、きっと吉乃様の所ですよ」
「そうだな、まったく忙しいお方だ」
二人は数馬のいない
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