第14話 仇討ち成就
汗ばむような午後にも
源之助は一人で店内に入ると亀石に声を掛けた。
「
亀石は一瞬驚いたが、こらえきれずに大声で笑った。
「わしと勝負だと、どの口が言うか。おぬしのようなそろばん
「妹の
亀石は
店を出るとついて来た二人の浪人に数馬が近づいた。
「おぬしたちは
「何者だ、邪魔をするとおぬしから
数馬は少しも
「わたしは
と、
二人の浪人は
広場には瑞江が
「わたしは
数馬が割って入ると、源之助も素早く
「返り討ちにあっても恨みっこなしだぞ」
亀石は笑みを浮かべて刀をゆっくり抜き
瑞江は今一度数馬からの指導を思い出して心を
「剣術は足元を固め大地を踏みしめてこそ
数馬に言われるがままに瑞江は数馬の足元を
「長い薙刀の敵を斬るためにはこのように薙刀を跳ね返して近づくしかありませぬ。亀石の薙刀を払う刀はわたしが受け止めます」
瑞江は数馬との呼吸を合わせるため何度も
数馬が亀石の正面で下段に構えると、それを合図に瑞江が横から足首を
亀石は薙刀が届かぬところまで横に動いて構えなおす。瑞江がさらに追って薙刀を
何度かその状態を繰り返すうち亀石は
亀石は一気に
その瞬間、瑞江は飛び上がった亀石の両足首を薙刀の
着地と同時に
「今だ!」
亀石が
「
数馬が兄妹をねぎらって言うと、いつの間にか集まった見物人が拍手と
「すべては香月殿のおかげでござる。
源之助に続いて瑞江も、
「香月様のご指導がなかったらとても勝てませんでした。感謝申し上げます」
深々と頭を下げた。
「実際に戦ったのはあなた方です。それにしても瑞江殿はお強い」
「わたくしをお
瑞江が皮肉たっぷりに言うと「申し訳ない」と数馬が首筋を
そこには暑さを忘れて
仇討ちを
「仇討ち赦免状は確認したが、討たれた者が亀石重兵衛であるとどう証明いたす
代官
「それはわたくし香月数馬が確認済みでございます」
数馬が進み出た。
「そなたは何者だ、そなたごときが何を証明するというのだ」
「わたくしは
代官はすぐに数馬の小太刀を持ってこさせた。
「まずは
代官は言われたように鎺を見て「これは」と、目を丸くした。
「はい、紀州徳川家の家紋です。この小太刀は上様がまだ紀州和歌山藩主であられた時に当家が
代官は慌てて三人を座敷に上げると、
「これはご無礼
代官の態度の急変には驚かされたが、
亀石の
「もうわかりましたよ、すべて
数馬は己の素性や吉乃との関わりを明かした。
「何と……、吉乃様が
源之助は顔色を変え、瑞江は開いた口を手で
「刺客は吉乃様の顔を知りませぬ。それで江戸入りした父娘を手当たり次第に
「とんでもござらぬ。こちらこそ香月殿の大事なお役目の
いつの間にか日が傾き宿に着いた時には街には明かりが
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