第6話 旅の道連れ
道太郎と吉乃を乗せた船は
船頭は
船は小田原に上陸して修理することになったが、道太郎はそれを待たずに
それには訳があった。道太郎は乗船している
(見張りがいるということは、このまま江戸に入港すると刺客の集団が待っているということか)
そう考えながら
道太郎は人気のない
「おまえは誰だ、
道太郎にいきなり前を
「わたしはただの人足です。命ばかりはお助けを」
「人足ではあるまい、その身の振る舞いは武家の
刀の
「申し上げます、
と、
道太郎はこの男には
「大久保様が何故われらを亡き者とするのだ。
さらに
「大久保様は上様のご
「されば
「それは姫様が上様とご対面され、お命を狙ったのが大久保様であると
吉乃は道太郎の後ろで身を
「われらを
「はい、
道太郎は何でも話す男を
「これだけ話せばもはや大久保様のもとには戻れまい。このまま姿を消すならば生かしてやる」
その言葉が終わらぬうちに男は立ち上がり、振り返ることもなく
大久保忠直は道太郎の主である
加納は大久保の
道太郎は江戸に着いたら加納を頼るつもりであった。しかし加納の立場を考えると足を向けるべきではないと思った。
二人は
落ち着く先の決まらぬまま早朝に宿を発ち
道の先で争う声がした。
「てめえら女房を
「いい女は高く売れるんでね、おめえはさっさと
見ると一台の
「お武家さん、お願いしやす。その駕籠を止めておくんなさい」
道太郎は刀を
「おい
「何を!さんぴん、痛い目を見たいのか」
前の駕籠かきがどすの
「俺はこっちの娘の方がいいぜ」
今度は後ろの駕籠かきが言った。
駕籠がいったん下ろされ駕籠かきがそこを離れると吉乃は駆け寄って青い顔をした女房を助け出した。
駕籠かきは道太郎を挟み交互に
道太郎は難なく棒をかわすと相手の手首を
駕籠かき二人は急な斜面を転げ落ち、下方の樹木に
亭主の方は別の駕籠かき二人を相手に
道太郎が助けに向かうと駕籠かきたちは駕籠を捨て慌てて逃げ去った。
自由になった女房が「おまえさん!」と呼びながら亭主の胸に飛び込んだ。
「もう大丈夫だ、おしず
「ありがとうございました。おかげさまで女房も無事に戻りました。あっしは江戸の
しずも深々と頭を下げた。
「何事も無くてよかった。それがしは
「香月様は江戸へ行かれますかい」
「うむ、そうだが当てにしていた落ち着き先を失ってどうしたものかと思案していたところだ。ところでそれがしは浪人だ、様はやめてくれ」
「わかりました、それでは香月さんと呼ばせていただきます。香月さんは
「それはかたじけない、こちらこそ
勝五郎は
「そうか、勝五郎さんは大山詣にかこつけておしずさんと旅がしたかったのだな」
「へい、おしずにはいつも心配ばかりかけさせているもんですから、たまには夫婦水入らずで旅でもするかということで出て来たんです。
勝五郎は首に手をやり苦笑いをした。するとしずが、
「そうじゃないんですよ、わたしがいけないんです」
勝五郎を
「この人は『を組』を
一気にまくしたてるしずを三人は口を開けて見ていた。
「おしずさん、
吉乃がうっとりとした顔で言った。
だが吉乃の
勝五郎たちのように何でも言い合える
(忠義のためとはいえ妻のそなたにも
道太郎はこみ上げる想いを飲み込んだ。
武家に生まれ、忠義こそが武士の本分と教えを受けて育った。それが今では己の全てを捨てることが忠義となっている。誰にも認められず、
道太郎は武士である意義を見失う
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