第3話 姫の誕生
翌年、梅と山桜の花を同時に
その日は村をあげての祭りのようだった。
季節ごとに
村人はこぞってその誕生を祝った。
生まれたのは
吉乃も乳をよく飲み、順調に育っていた。
帰りは城下に出て遊んでくるようにと
妻の実家を見張っていた
一方、届いた荷を前にして満江は
まず書状を手に取ると丁寧に開いた。そこには
(突然の
満江は書状を膝に置いて目を閉じた。
「わたくしが信じた通り、あなたはわたくしたちを
心に
満江は
書状を送った三日後、道太郎は
「半年ぶりよのう、このような里に隠れていようとは知らなんだ。
道太郎はその口調に城下から逃走する際に
そして妻に書状を送ったことを気の
「貴殿の留守中に美世と赤子を殺してしまえば済んだものを、先にどうしても勝負がしとうて待っていたのだよ」
若者は十七・八歳の美しい顔立ちで、腕に自信があるのか笑顔で言った。
「おぬしは何者だ、名乗られよ」
道太郎は荷を下ろしながら
「
笑顔を残したまま太刀を抜いた。
道太郎は肉厚の太刀を見て考えた。
(こやつはそれほど腕力があるようには見えない。重い太刀を振るうのは身体全体の回転と身のこなしから
道太郎が刀を抜くと直ぐに上段から打ち込んできた。
思った通りであった。振り出した
道太郎は無理に
だが思ったより回転が速く、身体に巻き付くように繰り出す刃は到達する直前まで見えない。刀身の長い切っ先は受け流す度に
道太郎は痛みに耐えながら、傷を
やがて藤丸は動き続けることで次第に息が荒くなった。もはや藤丸の顔から笑みは消え、額には汗が
速度が鈍った回転から刃が胴を払ってきた時、道太郎は初めて太刀を
藤丸は「えっ!」とあり得ないというような
藤丸の息が
道々、これから葉山の
道太郎は円祥と相談し、山中にある
そこでは
伊助は
山には原材料となる
備長炭は
伊助は気の優しい人物であったが、炭のことになると
道太郎はそんな伊助を尊敬し、
吉乃は炭を焼く道太郎を眺めながら四歳の誕生日を迎えた。
道太郎たちは久しぶりに寿林寺を訪れ無事に育ったことへの感謝を込めて
吉乃は物心ついた頃より道太郎を父だと思っていた。
だがその父は母をお美世様と呼び、母は父を道太郎さんと呼ぶ。
吉乃は武家の家庭というものを知らなかったが、百姓の家でも父親が
「
「それはじゃな、父上がそれだけ母上を大切に思っているからじゃよ」
と、何とか取り
午後吉乃が昼寝をしている間、縁側に腰掛けて茶を
「いつか殿様に姫様のお
「まだわかりませぬ。殿の血が流れている吉乃をこのまま炭焼きの娘として育てて良いものか悩む一方で、わたくしのような身分の低い
美世は正直な気持ちを述べた。
「お美世様がどのような決断をされようとも、わたくしは
道太郎も胸の内を明かした。
「そなたたちのさだめはいったい
円祥は目を閉じて
その時、三人の会話を
昨日まで
山伏は中腹まで山を登ったところで替えの
話を聴いた改元は気づかれぬようにその場を離れた。
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