第2話 父の事情
時は
それを許さなかったのは真宮の
葉山は
いったんは実家に帰された美世であったが、それでも葉山の怒りは納まらず
美世の
「湯殿番であったお美世様に
加納はため息のような長い息を吐くと腕を組んだ。道太郎は黙って続きを待った。
「
話の先を加納が言い出しにくいのを察して道太郎は初めて口を開いた。
「わたくしのお役目は人知れずお美世様を逃がすことでございますね」
「その通りだ、殿も
道太郎はわかっていた。それは武士として恥ずべき
それでも
「殿を
加納は吉宗の
「恨むなどあろうはずがございませぬ。どのような形であれ殿のお役に立てるのであれば
「よう言った、道太郎。そなたは
加納にとって道太郎は手放すには
翌日、
道太郎は
美世は
「お美世様、わたくしは香月道太郎と申します。これから先はわたくしがお世話をさせていただきます。何なりとお申し付けくださいませ」
道太郎の
「お美世様などと……、わたくしは身分の低い
「何を
「わかりました。それではせめて道太郎さんと呼ばせてください。道太郎さん、どうぞ
二人が打ち解けたところに加納が入って来た。加納は二人の前に
「殿からである。
道太郎は二振りの刀を頭上に
続いて加納は
「こちらは
道太郎は加納の心遣いに深々と頭を下げた。
夜半になり屋敷を抜け出した道太郎は、門前に待たせていた
月もなく町は
城下のはずれまで来た時、前方に
「
道太郎は
空中で
刺客は腰から落ちながらも受け身を使って素早く起き上がった。
「ふっふっふ、強いのう。関口新心流か、剣術ばかりか
(投げられながら刀を払うとは恐るべき男だ)
道太郎は次は
道太郎は城下を離れたところで駕籠を止めた。
夜は白んで
「お美世様、
美世は疑問に思うことなく
「すべては道太郎さんにお任せします。歩くことには
そう言って自ら駕籠を降りた。
道太郎は代金を渡して駕籠を帰し、
「どうやら我らの行き先は知られているようです。後をつける者もなく、刺客すらもあっさりと帰って行く。探す必要がないからと思われます」
「それではどういたしましょうか」
美世は足を止めて道太郎を見上げた。
「加納様が用意してくださった
それを聴いて美世は
幼さの残る
道太郎が向かったのは古い山寺で、南に広がる
「よう上って来なさった、さぞ疲れたじゃろう。久しいのう道太郎、女子連れで此処まで来たということはただ事ではないな」
円祥は美世をちらと見ながら言った。
「はい、その通りです。和尚に願いの
「まずは茶でも飲んで疲れを取りなされ。話はそれからじゃ」
円祥はそう言うと
「このお方はお美世様といって殿様のお子を宿しておられます。ある勢力からお命を
道太郎に並んで美世も頭を下げた。円祥は
「わかり申した、此処で
「かたじけのうございます。ところでお腹の子の父親についてはどうぞご
「わしはこれからご
円祥はそう言うと高らかに笑った。
その後円祥は里に下りて
夕方になり道太郎たちが行ってみると村人の手で寝具や暮らしに必要な物が運び込まれており、その後も米や野菜が届けられた。
二人は村人一人一人に礼を言って見送った。村人は
かくして道太郎も新たな暮らしを始めたのであった。
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