第7話 宝くじ番号を予測! 億万長者への道
「見太郎、俺は気づいたんだ。未来予測を使って試験やバイトを頑張るのは正直、効率が悪い!」
『……それは、あなたが努力を放棄しようとしているという解釈で正しいですか?』
「違う! これは戦略的撤退だ! つまり、俺は試験やバイトでちまちま稼ぐんじゃなく、一発当てればいいんだよ!」
『まさか……』
「そう! 宝くじを当てる!」
『その発想に至る確率、95%。』
「最初から分かってたなら止めろよ‼」
というわけで、俺は本気で宝くじを当てるための計画を立てることにした。見太郎が予測を駆使して宝くじの高確率な数字を弾き出せるなら、これほどラクな金儲けはない。そもそも試験やバイトで地道に努力しても、思い通りにならないことが多すぎると痛感した以上、ここで一発逆転を狙うのは当然の選択だろう。
「見太郎、今までのデータを解析して、一番当たりやすい宝くじの番号を教えてくれ!」
『宝くじの当選番号は完全にランダムであるため、確実な当選予測は不可能です。しかし、過去の統計から最も当たりやすい数字の組み合わせを導き出すことはできます。』
「つまり、可能性の高い数字を選べるってことだな?」
『はい。最適な番号を生成します……完了しました。ロト6で推奨する数字は「2、5、9、14、27、33」です。』
ロト6とは1~43の数字の中から6個を選ぶ宝くじだ。
「おおお、これは当たる気しかしない!」
やはり、AIが解析するとそれっぽい数字がサクッと出てくる。俺はさっそく宝くじ売り場へ向かい、見太郎が弾き出した番号でロト6を購入した。これまで大きな当選など一度も経験がないが、今回は違う。なにしろ未来予測をフル活用した《最強の番号》なのだから。
「これで俺も億万長者か……ふふふ……」
当選発表は1週間後。それまでにやるべきことは一つ。
「宝くじが当たった後の生活をシミュレーションしておこう!」
『シミュレーションを開始します。』
「まずは当選発表の瞬間!」
『あなたはテレビの前で息を飲みながら結果を待っています。1つ目の数字……2! 的中! 2つ目の数字……5! 的中!』
「よっしゃ‼」
『しかし、3つ目の数字は8……あなたは叫びます。「なんでだよおおおおお‼」』
「ちょっと待て! 俺の夢のシミュレーションがいきなり破綻してるんだけど⁉」
『確率的に当たる可能性は非常に低いため、期待値を考慮したシミュレーションです。』
「いや、夢を見せてくれよ‼」
俺はガッカリしながらも、シミュレーション上の《夢破綻》にツッコミを入れる。せっかくなら「大当たりで人生ウハウハ」みたいな理想の未来を予測してほしいものだが、見太郎はあくまで冷酷に事実(確率論)を突きつけるだけだ。
そして迎えた当選発表の日。宝くじ売り場で手に入れたロト6の券を握りしめながら、PCの前で緊張に耐える。脳内では「もし当たったら高級車を買って、海外旅行に行って……」と妄想が膨らんでいる。
「頼む、当たってくれ……!」
息を呑みながら、当選番号をチェックする。
『1つ目……2!』
「きたあああああ‼」
『2つ目……5!』
「完璧だ‼!」
『3つ目……7。』
「……は?」
『4つ目……11。』
「……ちょ、待って、違う違う違う!」
『5つ目……28。』
「おい‼」
『6つ目……35。』
「全然違うじゃねーか‼」
結果は見事にハズレ。2つまでは合っていたが、それ以降は完全にかすりもしない数字が並んだ。俺の期待は一瞬にして地に落ちる。
「……結局、俺の宝くじは完全なるハズレ。わずかな望みにかけた俺の夢は、儚く散った……」
『未来予測AIでも、宝くじのランダム性を完全に制御することはできません。』
見太郎の淡々とした声が余計に悔しさを煽る。もちろん、最初から「完全ランダムなものは無理」と聞かされてはいたが、人間はどうしても夢を見たい生き物なのだ。そう簡単に納得できるか。
しかし、俺はまだ諦めない。ロト6がダメなら、他の形でワンチャン狙うしかない。
「よし、次はスクラッチくじだ!」
『スクラッチくじは完全に運任せですが、削る際の心理的傾向や手の動かし方の統計データを分析することで、当選確率を《当たる気がする確率》に変換することが可能です。』
「いや、それ意味あるのか?」
『統計的には、削る前に気合を入れることで当選したと錯覚する確率が8.2%向上します。』
「それ、ただのプラシーボ効果じゃねーか‼」
そう言いつつも、俺はスクラッチくじを10枚購入。見太郎の指示に従い、《最も希望が持てる削り方》を教えてもらう。
「よし……まずは1枚目!」
慎重に削る——ハズレ。
「まだいける‼ 次は2枚目!」
削る——ハズレ。
「ラスト1枚……頼む‼」
祈るような気持ちで削ると——
『おめでとうございます、200円の当たりです。』
「……おお⁉」
『なお、購入金額は2000円。収支はマイナス1800円です。』
「めでたくねぇよ‼‼」
「それ、負けてるって言うんだよ‼」
結局、当たったといっても焼け石に水。2000円分買って200円回収なら、明らかに損をしている。
こうして、俺の宝くじ大作戦はことごとく失敗に終わった。時間とお金を無駄に使い、結局得られたものは《運が絡むギャンブルは難しい》という当たり前の事実だけ。
「……どうやら、未来予測AIを使っても、楽して金を稼ぐのは無理みたいだな。」
『その結論に至るまでに、なぜここまで時間を要したのですか?』
「夢を見たかったんだよ‼」
俺は悔しさを隠しきれず、思わず天を仰ぐ。見太郎は《最初にお伝えしました》とでも言いたげだが、ここまできたらもう弁解の余地もない。
未来予測AIですら宝くじの当選番号を完璧に当てることはできないのだから、SNSで『AIが予測した当たり番号を教えます!』なんて言ってる奴らは、十中八九詐欺師だろう。頼むから、そんな《未来の見えない》連中に大切な金を託さないでくれ。
今回は失敗に終わったが、まだ終わりじゃない。宝くじがダメだったからといって、ほかにも金儲けの手段はいくらでもある。
「こうなったら……他の方法で金を稼ぐしかない!」
そう鼻息を荒くしながら、俺は新たなビジネスモデルや投資計画を思いつこうと頭をフル回転させる。見太郎の予測能力が通用しないほど運任せなギャンブルはダメだが、もっと現実的な投資なら勝ち筋があるかもしれない。あるいは、副業で一発狙うとか……。
こうして俺の《未来予測AI活用による金儲け計画》は、新たなステージへと進むのであった——。まだ夢を捨てるには早いはず。未来は一つではないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます