神様は、面倒くさい。

「スー...。」

「スー...。」


...熟睡しすぎじゃないですこの子?ほら、アレも困ってますよ。


「...アレぇ?寝かせる時にやり過ぎた?え、えー?

妖気に耐性は付いてたはずなのに...。というかなんか

成立も上手くいってないし...。んー...?」


...なんか可哀想になってきますね...。


「...もうこのまま強制で契約をー...いやいや、ダメ、ダメです。先代さんにもしばかれましたし...。」


...声掛けてみましょうか。というか随分丸くなってますねこやつ...。

何か転機があったのかしら。


「スー...。」


起きて...起きなさい...。


「スー...。」


...あの、起きて...。


「スー...。」


...よし。「朝よー、起きなさい。」


「はっ!おはようございます!寝坊しましたごめんなさーい!」


「え?」


「え?アレ?母さんは?」


「あっ、えっと、こんばんわ。私は◼️ と申します。」


「ん?なんて?

ちょっと、ちょっと待って。何が、どうなってんの?」


目が覚めたら、そこは神社でした。夕日の落ちかけ、

逢魔時お誘いの時間の。

件の誘い人だろう、可愛らしい子が眼前に立っている。

見た目に合わない、理性が溶けそうな甘ったるい声を響かせている。

ハエトリグサ?ウツボカズラ?どっちにせよ、私は餌で、此処は狩場だ。

越えちゃいけない線を、おもっきし踏み越えている。アカン。


「...サヨナラ!」

三十六計逃げるに如かず!こんな場所に居られるか!私は帰らせてもらう!


「...えー!?ちょ、ちょっとお待ちください!


その命令を聞いた瞬間、体が止ま...らない。謎に止まりたくなったが、気合で動く。

「ぐぬおー!」乙女らしからぬ気合だけど気にしない!死ぬよかマシじゃあ!


「お待ちください!結界にぶつかっちゃいますよ!?お願いですから

待ってくださーい!?」


え?


「へぶっ...。いったい...。」


...どうやら、最初から詰んでいたらしい。

強いて言うなら神社に行ったのが敗因か...。ぐぬぬ...。


「だ、大丈夫ですか?えっと、取って食うだとか、そういう訳ではないのでどか

ご安心なさって下さい...。」


...ホントぉ?うーんまぁ何か抵抗できる訳でも無さそうだし、いっか。


「...はい。それで、私は何をすれば良いんですか?」


「(ホッ...。)良かったです。

それで、えっと。お呼びたてした用件なのですが...。

私の巫女に、なっていただけませんか?」


巫女恋人ねぇ...?随分日和りましたね。

前ならになれとか男女関係なく、拒否権なしに言っていたのですけどね。


「...巫女って何するんです?」


神社の回りの管理や参拝(できれば毎日)、

私の話し相手などをお願いしたいです。あの...私料理できなく...。」


ん??できなくなったって何?んーでも、料理は一応できるし、

時間は作れんでもないし...それでいいか...?い、いや待てコレ大丈夫かな?

まーた越えちゃイケナイ線越えそうじゃない?なんか副作用とか出たりしないか?


「巫女になって良くない事起きたりしない...?」


「大丈夫です私が見守りますのでそんな事は起こり得ません。

起こさせません。(即答)」


うっっわ。目の色変わった...。

やっぱやめ...やめる選択もそれはそれでマズいか...?


...さっきまでの金剛石の如き瞳は何処へやら、底の見えない

泥水が如き瞳へ早変わり。さて、どうなさいます?

選択を誤てば、常世の国まで一直線。

彼岸と此岸、現世と幽世。貴女は、その境界線に立っているのです。


「...巫女には、ならない。ならないけど...

友達って、ダメ?今の所時間はあるから、当分拝みに来られそだしさ...

どう?」


...どっち着かず?それは...どうでしょう。この場は乗り切れても、

後から面倒ごとに巻き込まれそうですね。


「え?」


「(...やっちゃったかなぁ!?すっごい顔してる...複雑そー。)」


「...わかりました。お付き合いというのは段階を踏むモノですからね。

貴女を迎えられるよう、頑張ります!」


...?聞き間違えか。

それはそうと、すっっっごい不安そうな顔。

...申し訳ないけど、わたしゃまだ永久就職したい訳でも、

ましてや、死にたい訳でもないのです。そうなったらそん時は...まぁ。


「...大丈夫そう?」


「えぇ!大丈夫です!

...これからよろしくお願いします。握手しましょう、握手。」


「握手?...うんわかった!私は如月華火きさらぎはなびこちらこそよろしくね!

あー...ごめん名前は?」


「あっ、失念していました...。それでは、とお呼び下さい。


「わかった。改めてよろしくね、カグツチ。」


「はい♪」


...という訳で。

私のせいでちゃんとした神になれなかった娘荒神と、

自分を認めない厨二病の中二少女はオトモダチになりましたとさ。

んー...。正直もうちょっと面白いオチになるかなーと思ったんですけどねぇ。

ま、に友達ができたので、よしとしましょう。


今回は此処まで。此岸より、伊邪那美が語らせていただきました。

義務なき死者と義務尽くしの生者の皆様。

どうかチャンネルはそのままで♪




















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境界線 霜月 冬至 @satukitks200857

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