第8話 寄り道
朝通った時には気が付かなかったが、俺達が通う蔡銭学園高等学校から駅までの間の道のりには、かなりたくさんの店があるようだった。
「それで? 近頃の高校生ってのは、どこで、何して遊ぶもんなんだ?」
「実はあたしもよく知らないんだよねえ。放課後も土日も基本部活ばっかだし」
「おい。話が違うぞ」
昼間の頼もしさはなんだったんだ。
「そう怒りなさんなって。カラオケとか、ゲーセンとかならあっちの方にあるよ。飲み屋さんとかも多いみたい。あたしはあんまり近づかないけど、どうする?」
「いや、今日はいいかな。いきなり行くにはハードルが高そうだ」
流行りの歌なんて知らないし、ゲームに対しても驚くほど興味が湧かなかった。
妻崎がそういうところに詳しいのならついていくのも面白いんだろうが。
あんまり近づかないと自分で言ってるしな。こいつ。
今日は、行かない。
俺一人でも行かない。つまり今後行くことはない。そんな予感がする。
「うーん、どうしよっかなあ。久郎、何食べたい?」
「いきなり聞かれてもなあ……うん?」
そもそも何か食うのは決まりなのか?
遊びの意味を広くとらえるなら、一緒に食事というのも、まあ、セーフか。
「…………ハンバーガー、とか、駄目か?」
「お、いいじゃん。駅の中にあるしね。行こ行こ、がっつり食べよう」
あまりにも無難な提案だと思ったのだが、妻崎は乗り気のようだった。
嫌そうな顔をするでもなく、なんなら少し嬉しそうな顔で鼻歌交じりに歩き出す。
「お前、食い物だったら何でもいいんだろ」
「うるせー」
試しに言ってみたら、長い脚で尻を蹴られた。
口は災いの門、俺の自業自得だ。
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