第4話

「ぐがラララッ」

 獣の唸り声が山中に響く。

 「ギャッン」

 モフ子の悲痛な声と同時に木々が揺れる。

 巨体がモフ子に体当たりをしモフ子は吹き飛ぶ。

「ぐるるる」

 威嚇しながらモフ子は立ち上がり巨体を睨む。


 ドスン――ドスン――。

 巨体はその場で足踏みする。

 地面が揺れ、木々が震える。

 森全体が敵になった、感覚に陥る。

「がるるるる」

 モフ子の目の前に立つ巨体、ジャイアントボア。

 すべてを貫かんする鋭い牙、禍々しい漆黒の剛毛鎧に覆われた肉体、全長8メートルの巨体にモフ子は気圧される。


 ドスン、ドスン、ドスン。

 勢いをつけるように足踏みが速くなる。

 強く地面を踏みぬく!

 肉の弾丸がモフ子に迫りくる。

「追いついたっ!」

 横からの突然の衝撃にジャイアントボアは目を見開く。

 見開くとそこには拳を振りぬいた男とそれを追う女の姿が見える。

 ドギャン――。

 巨体は木々を数本倒しながら吹き飛ぶ。

「大丈夫モフ子」

「わん!」

「よかった……」

 ココアはモフ子を抱きしめる。

「気をつけろ!通常よりもデカい」

「はい!」

 ノウの声掛けにココアは警戒を強める。


 ジャイアントボアはもう一度体当たりを行おうと足踏みする。

 それと同時にノウはジャイアントボアに向かって走り出す。

 一気に距離を詰め真上に飛び上がる。

 腰に携えた剣を抜き落下しながら首を切り落とそうと振りぬく。


 ガキンと剛毛の鎧の前に刃が立たない。

「硬いな……ぬわっ」

 ジャイアントボアが体を揺らしノウを地面に振り落とす。

 地面に転がるノウを押しつぶすかのようにジャイアントボアは突進する。

 

「噛みついてモフ子」

「ワンッ!」

 ガブっと目玉を噛みつかれる。

「がららっららら!」

 刺すような痛みにジャイアントボアはもがき苦しむ。

「助かったありがとう」

 その隙にノウは態勢を整える。


「ガっら!」

 首をブンブンと振りモフ子を振り落とした。


(剛毛のせいで切れないな……さてどうするか)

「どうするノウ、私たちの攻撃が効かないわ」

 

「30秒時間が欲しい」

「30秒……?」

「そうだそしたら奴の首を一撃で落とせる」

「分かったわ私たちに任せて」


(剣に俺の魔法を纏わせる、そうすれば切れる)

 ノウは剣を上段に構える。

 ゆっくりと体にめぐる魔力を体の外にだして魔法に変換する。

 白いオーラのようなものが全身に纏わりつく。

 そのオーラを丁寧に赤ちゃんを抱きしめるように優しく手に持った剣へ動かす。

 

(モフ子一人で30秒耐えるのは難しい……)

(だったらもう一体召喚する……私の魔法は維持のために常に消費し続ける……二体同時召喚は初めてだけど一か八かやってやる)

「ガララ!」

 ジャイアントボアが跳ねるように暴れ出す。

 モフ子はそれに対して見ることしかできない。

 ドン――!

 響き渡る衝撃音と共にノウ目掛けてジャイアントボアは突進する。

「来て!ラリアット」

 叫びながらココアは召喚する。

 ジャイアントボアとノウの間に魔法陣が展開する。

 

 ジャイアントボアは魔法陣に気づくが無視して突っ込む。

「うっホおおおおおおおおお!」

 魔法陣からジャイアントボアに劣らない大きさの大猿が現れる。

 突っ込んできた巨体を体全体で抑え込む。


 ラリアットは足を地面をえぐるように踏み込む。

 ジャイアントボアは地面を蹴り続け押し込む。


 力比べは互角だがラリアットは常にココアの魔力を消費しているそれもモフ子よりも多くの魔力を……。

「うっ、おえっ」

 ココアの視界が暗くなったり明るくなったりと点滅する。

 それと同時に酷い吐き気に襲われる。

(まずい……魔力切れ)

 ココアはなんとか耐えようと踏ん張るがプツンと意識が切れる。


 その瞬間ラリアットの体が薄くなり消えてなくなる。

 ジャイアントボアの巨体がノウに迫る。


「できた……」

 集中するために閉じていた目を開け迫りくるジャイアントボア見る。

 上段に構えた剣は星が輝くように光る。

 

「がらああああああああああ」

 雄たけびを上げながら最後の突進を行う。

「くらえ……魔閃撃」

 突進に合わせるように剣を振り下ろす。

 ジャイアントボアの剛毛に剣が触れる。

 溶けるようにスルリと刃が入っていく。


 ジャイアントボアの体はノウを避けるように半分に分かれる。

 息絶えたジャイアントボアを見ながら剣をしまう。


 ♦


 一定の間隔で揺れる。

「あれ、ここは」

「起きたか」

 揺れを感じ取ったココアが目を覚ます。

「あ、ノウってなんでおんぶ」

「さっきまで倒れていたんだよ魔力切れで」

「そういえば……あの後大丈夫でしたか?」

「あぁ、大丈夫ちゃんと討伐できたよで今はその帰り」

「なるほど、あ、下ろして大丈夫ですよもう歩けるんで」


「無理しなくていいんだぞ」

「無理とかじゃないです!安心してください!」

 そう言ってココアはノウの背中から下りるが。

 ぺたん――。

 足がぐらつき座り込んでしまう。

「すみません……歩けないみたいです」

 泣く泣くノウの背中を借りる。


「村に寄ってから帰るけど大丈夫か」

「はい大丈夫です!」


 ♦


「あ!帰ってきた!」

 子供の明るい声が村に響く。


 その声に村中の人たちがノウ達を出迎える。

「おぉ冒険者の方ご無事で……」

「それで奴はどうなったんだい」

 ジャイアントボアについて2人に聞きだす。

「大丈夫、ジャイアントボアは俺たちが討伐しました」

「本当か!それはよかった……」

 安心したようにホっと胸を下ろす。

 ジャイアントボアが倒されたことに村人たちは喜び騒ぐ。

 その様子を2人は眺める。

「パーティ初戦闘上手くいったな」

「はい!」

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ストロング バリバリさん @baribarisann

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