第7話 SF 第5戦 オートポリス

 日曜日の成田行きに乗り、翌月曜日夕方成田に着いた。時差ボケの対策のために機内で寝ないようにしていた。でもヨーロッパ時刻では、午前10時である。成田空港近くのホテルに泊まり、ぐっすり寝て火曜日に成田から福岡にとんだ。そして凛さんの運転で大分入りである。途中、阿蘇の山並みが見えるミルク街道は気持ちのいい景色だった。

 水曜日にチームミーティング。木曜日からフリー走行である。マシンの調子は悪くない。トップ10とまではいかないが、15番手のタイムをだすことができた。今回はWECでのチームメートである小田も走っている。彼は5番手のタイムをだしている。そのマシンのセッティングと同じにしてもらったのだ。そして、走るたびに小田の指導を受けた。特にヘアピンのラインのとり方は、今までと違う。いつもよりインをとるラインだ。

 土曜日。予選日である。ところがドシャ降りに見舞われた。コースが川になっている。ウェットなんていう状態ではない。その日は全てのレーススケジュールがキャンセルとなった。朱里は凛とともに、温泉でのんびりすることになった。湯布院の湯は熱い。長くは入っていられないが湯上りが気持ちいい。いい気分転換になった。

 日曜日。午前に予選をすることになった。いつものQ1、Q2ではなく40分間の計時予選である。朱里のマシンは悪くない。前半だけならトップ10に入るタイムをだしていたが、皆が本気で走っているわけではない。

 残り5分間でラストアタックにでる。全車がでていって、朱里は最後尾ででていった。だが、これが裏目となった。朱里の前を走っていたマシンが第1へアピンの前でスピンしてしまい、コースサイドに停まってしまったのである。そこでイエローのフラッグが振られた。タイム測定なしである。その対象は朱里だけである。他のマシンはイエローがでる前に通過しているので、タイム測定対象となっている。そこでポールをとったのは、H社の野沢である。一昨年のチャンピオンである。タイムは1分26秒757を出している。朱里はその2秒落ちで最後尾である。スピンしたマシンは予選前半に朱里よりいいタイムをだしていた。これが一発勝負の予選の怖さである。

前座レースが終わり、午後2時半から決勝である。気温は17度しかない。今にも雨が降りそうな天気だ。


 朱里は最後尾の21番グリッドからのスタートだが、悲壮感はない。マシンの調子は悪くないので、スタートでダッシュをもくろんでいたのである。

 レーススタート。1台がスタートミスをした。その後ろにいた2台がそれをよけて左右に分かれる。それに、もう1台がギアをミスった。スピードがのびない。それをまたよけるマシンがいる。朱里は最後尾から見ていたので、余裕をもってそれを回避できた。スタートで2台を抜いたわけである。

 2周目、早くもピットインするマシンがでてきた。タイヤ交換義務を果たすためであるが、このサーキットはタイヤに厳しい。2つのヘアピンがあり、急ブレーキがしいられる。監督の野島パパは中盤までタイヤ交換を待つ判断をしている。

 5周目、序盤のタイヤ交換をしたマシンが5台でたので、朱里は14位に上がっている。小田も早めのタイヤ交換をしている。タイヤマネージメントはお手の物だ。

 20周目、1台のマシンがコース上でスピン。コースサイドで止まってしまった。監督の野島パパは

「朱里、ピットインだ!」

 と無線でどなる。すぐにSC(セーフティカー)導入が決まった。朱里はナイスタイミングでピットインである。朱里の後にも残ったマシンが続々とピットインしてくる。

 23周目、全てのマシンがピットインを終えた。朱里は15位を走っている。前を走っているのは、ライバルの坪江美香である。美香は早めのタイヤ交換を果たしている。

 24周目、セーフティカー解除となった。一斉にアクセルをあける。

 27周目、美香のマシンに朱里がせまる。野島パパはいやな予感がした。すると、右コーナーで朱里がハーフスピンを喫したのである。幸いに順位を落とさずにコースに復帰することはできた。だが、美香に離された。

「朱里、コーナーであまり近づくな。空気の層に巻き込まれてハンドリングがうまくいかなくなるぞ」

 と、野島パパが無線で指示する。朱里はそれを実感したのだ。

 35周目、ストレートで美香に追いつく。美香のタイヤは厳しいようだ。ブレーキの際にマシンがぶれている。朱里はじっくりと抜くチャンスを待つことにした。

 40周目、残り2周で朱里は勝負に出た。第1へアピンで美香のアウトに並ぶ。だが、ここはインをおさえられた。想定範囲内で勝負は第2へアピン。今度は朱里がインをとった。立ち上がりで勝負だ。最終コーナーでは朱里が前にでていた。残り1周。

 41周目、ファイナルラップ。すぐ後ろに美香がせまっている。そのプレッシャーに負けないで走るのは追いかけるよりつらい。2つのヘアピンで美香が隣に並ぶ。だが、朱里が立ち上がりを制した。結果、朱里は14位でフィニッシュ。今までの最高順位である。やっとビリ争いから脱することができた。ちなみに優勝は美香の夫、坪江だった。タイヤ交換を遅くした勝利である。坪江のチームの作戦の勝利ともいえる。1台体制の朱里のチームでは難しいと言える。小田は7位入賞を果たしていた。一時はトップ争いにからんでいたが、早めのタイヤ交換があだになったようだ。

 次戦は、3週間後のWECルマン24時間。その1週間前にSFのテストがあるが、それはキャンセルした。ルマンウィークは1週間前から始まるのである。

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