二千字以内で物語を書くという行為は想像するほど簡単ではない。短い字数でたったひとりの歌姫の人生や思いを淡々と、しかし読み手の心に強く印象づけて書いた本作は、書き手の高い力量と、輝かしい面だけに目を向けない視野の広さや、悲しみに耐えてきたまごころがあったればこそ完成したと思う。タグにあるとおり読後感は重めだが、それは歌姫イリナの人生の重みであり、何か目に見える、耳で聞こえる事物だけが人生の価値なのかと問いかける。
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