第20話 楠瀬 陽菜-くすのせ ひな- ③

私は、明るくて、元気で、誰とでも仲良くできる子。周りからは、よくそう言われていた。


「陽菜ってさ、太陽みたいだよね!」

「一緒にいると楽しい!」


そう言われるのが、私は好きだった。だって、私は「そういう子」でいなきゃいけなかったから。


でも——透花と蓮が付き合ったとき、私は心の中で

泣いていた。


透花は、私の親友だった。

優しくて、頭が良くて、しっかりしてて。

私がふざけても、ちゃんと受け止めてくれる

そんな子だった。


でも、蓮が透花と付き合うって聞いたとき

私の胸の中に何かが突き刺さった。


「おめでとう!」

笑顔でそう言った。

でも、本当は、そんなこと思ってなかった。


私は——ずっと、蓮のことが好きだった。


でも、それを言えなかった。だって、私は「陽菜」だから。太陽みたいに明るくて、みんなのムードメーカーで、悩みなんてない子だから。


透花と蓮が付き合っている間、私はずっと、それを飲み込んでいた。二人が一緒にいるのを見るのが苦しくて、でも、それを顔に出さないようにしていた。


だけど、蓮が透花と別れたとき、私は心の中で安堵した。

「やった……」

そんな自分が、最低だと思った。



透花とは、それを境に、少しずつ距離ができていった。


透花は変わらなかった。でも、私のほうが変わってしまった。一緒にいると、罪悪感が押し寄せた。


「透花が泣いてるとき、心のどこかで嬉しかった。」

そんな自分を、透花に見透かされるんじゃないかって思った。だから、私は透花を避けるようになった。


「最近、陽菜とあんまり話せてないね。」

そう言われても、「そうかな?」と笑ってごまかした。


蓮と付き合ったとき、私は救われた気がした。

「透花じゃなくて、私を選んでくれた」

それが、嬉しかった。


透花を裏切った罪悪感も、蓮がそばにいてくれるなら、消せるんじゃないかと思った。


透花を避けたのは、私が悪い。

蓮と付き合ったのも、私が悪い。


全部、私が悪い。

私は透花の親友だったのに、彼女を一番傷つけた。


だって、恋愛ってそういうもんでしょ。

透花だってわかってくれてる。そう思ってた。


--


そして、陽菜は蓮から別れを告げられる。

あっさりしたものだった。

「そうだよね。」としか言えなかった。


ずっと蓮はつまらなさそうだった。

そして、私も逃花を何度も思い出す。


私は親友を裏切ってまで大好きな人と付き合ったのに、その人と別れることになった。


夜、一人で部屋のベッドに座る。

スマホの画面には、もう動かない透花とのLINE。

「陽菜、最近どうしてる?」

「なんかあったら話してね。」


最後のメッセージは、透花の方からだった。

でも、私は既読もつけずに、ただ放置したままにしていた。


ごめんね、透花。


透花が死んでから、何度も「ごめんね」と思った。

でも、今さら何をしたって、透花には届かない。


私は何をして生きていけばいいの?

それすらも、もうわからなかった。

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