第二章 2
エルリックは、親の顔を知らぬ。
生まれてすぐの時に、彼を拾った老婆に育てられた。しかしその老婆も高齢であったためにすぐに逝去してしまい、彼の幼年時代は困難を極めたものになった。
他人の家の残飯を隠れて食い、井戸の水を自ら汲んで飲み、竃の灰のぬくもりで温まって眠った。川で身体を洗うのでいつも身体が冷たくて、終始震えていたことだけを覚えている。
長いものを扱うことだけが取り柄で、いつの間にか槍を使うことが得意になっていた。
どうやって人を殺すようになったかまでは、覚えていない。恐らくは、食べるに困っての些細なことであっただろう。
とにかく気がついたら槍を振り回して戦うようになっていて、十八になる頃には戦場に出ていた。
女を知ったのも、その頃だ。
こんなものかと思って抱き、こんなものかと思いながら終わった。特に感想はなかった。
人に対する執着、というものが、エルリックは薄かった。
幼い頃からひとと親しく過ごした経験が浅いためであろうか。
「ねえ、なに考えてるの」
入った娼館の適当に選んだ娼婦に話しかけられて、はっとする。
「別に」
一夜限りの相手だ。名前も知らない。知らなくていいと思っている。
「あたし、アンヌ。あんたは?」
「……なんでそんなこと聞く」
「これからいい仲になるのに最中に名前呼べなかったらつまんないじゃん」
ベッドに横たわり、そこに肘をつきながら、アンヌはいたずらっぽく笑った。色が白くて金髪で、目尻にほくろがあった。
「……エルリックだ」
「エルリック。どこの生まれ?」
「フェイの、小さな村だ」
「なんて村?」
「デン」
「なんでこんなとこで傭兵なんてしてんの」
「質問は終わりだ」
こほこほ、と小さく咳をしながら、アンヌは笑った。
「やあだ。案外怒りっぽいのね。若いのに、おやじみたい」
けたけたと笑われて、毒気を抜かれた。
ふう、とため息をついて、酒を注いだ。
「飲むかい」
「うん。もらう」
二人で酒を飲みながら少し話して、その日はそれで帰った。
娼婦は抱くものだと思っていたのに、自分でも意外だった。
もっと意外だったのは、再びアンヌに会いに行ったことだ。
「あら、また来たの」
彼女はエルリックのことをちゃんと覚えていて、それどころか名前まで記憶していて、部屋へ入ると酒を注いで歓迎してくれた。
「客の名をいちいち覚えているのか」
「やんないで帰ってく変わり者のことなんて忘れようったって忘れらんないよ。ほら、座って」
上着を脱ぎ、エルリックはそこに座った。こほこほ、アンヌは咳をしながら自分の杯にも酒を注いだ。
「その咳、続いてるのか」
「これ? 風邪みたいなもんよ。なかなか治んないの。こういう商売してると医者にかかってる暇なんかないのよ」
「一緒に行ってやるから行けよ」
アンヌはエルリックを振り返って、微笑んだ。
「あんた、いいひとね」
その笑顔に、どきりとした。
「金払って娼婦に医者に行かせてくれるお客なんて、いないよ」
「お、俺は別に」
「やさしいひとは好きよ」
言うや、アンヌは座るエルリックの膝の上に跨った。
「この前はお預けだったから、今日はちゃんとするね」
そうして唇を重ねると、もうたまらなくなった。
こうして、彼はアンヌの元へ通うようになった。
こほこほ、咳は相変わらず続いた。
「医者に行けよ」
「時間がないのよ。あたし、こう見えて売れっ子なんよ」
たまにしか会えないとわかってはいても、会いたかった。彼女が仕事で他の客と寝る、という事実には、目を瞑っていた。
「俺、頑張って金を貯めるよ」
ある晩、エルリックはアンヌにこう言った。
「金を貯めて、お前を迎えに来る」
「そしたら、風通しのいいとこに住みたいわ。ここは空気が悪いから。あと、丘が見えるとこがいい」
しかし、会いに来ればそれだけ金がかかる。金を遣えば、それだけ身請けをするだけの費用が減っていく。
大いなる矛盾を抱えながらも、会わずにはいられない。
できることならば、毎日でも会いたい。しかし、それはできない。
臍を噛むような日々が続いた。
市場の屋台で、ガラスの首飾りを見つけた。その青い色がきれいで、アンヌに買ってやった。安物だったが、彼女はエルリックに抱きついて喜んだ。
肌身離さず身につけて、大切にしていた。
ある冷たい雨の降る日、いつものようにアンヌに会いに行くと、なにやら館の様子がおかしい。
役所の役人が何人もやって来ていて物々しいし、医者らしき者も何人かいるようである。
「?」
不思議そうに入り口で佇んでいると、顔馴染みの下男がやってきて言った。
「ああ、旦那旦那。大変でございますよお。肺病やみがでちまって。役人が来るわ医者ぼんが来るわで大騒ぎなんですわ。うちは今日は休業で、大損ですよお」
「肺病? 客がかい」
「いやいや、
いやな予感がした。
「それは、誰だ」
「アンヌって女でさ」
「――」
顔が青くなるのがわかった。身体が、奈落の底にでも落ちていくような奇妙な絶望感を味わった。
「以前から病んでいたようで、部屋で血ぃ吐いて死んでたんですよお。もう、消毒しなくちゃいけなくて大変で。あっ旦那」
エルリックは階段を駆け上っていって、アンヌの部屋を目指した。
遺体はちょうど、担架で運ばれるところであった。白い布が被せられ、あの細い腕だけがだらりと垂れているのが、痛々しかった。側でこの館の主人がぶつぶつと文句を言っているのが見える。
エルリックは恋人が運ばれていくのを、茫然として見送っていた。ただそこに、立ち尽くしていた。
「ああ旦那、いらしてたんですか。アンヌの奴、おっ死んじまいましたよ。肺の病ですって。旦那も、診てもらったほうがいいですよ。いい仲だったんだから。ああいやだいやだ」
「……つは」
「えっ?」
「あいつは、どこに運ばれるんだ」
「お、お役所の地下室で」
「そうか」
エルリックはうつむいたままくるりと
そして役所で手続きをして、アンヌの遺体を引き取った。
身寄りのない、肺病で死んだ娼婦の遺体など、誰も引き取らないとわかっていたからだ。
そして彼女と暮らすために貯めていた金で、墓を建てた。
風通しのいい、丘が見える場所で、エルリックは『アンヌ』とだけ書かれた墓標を見ながら夕焼けに照らされている。
「……逝っちまったな」
ばあちゃんは俺を置いて、逝っちまった。お前も俺を置いて、逝っちまった。
みんなおれを置いていっちまう。
俺、寂しいよ。
アンヌ、お前にとって俺は数多い客のなかの一人だったかもしれないけど、俺はお前のことを忘れないからな。
季節は三番目の月、紅蘇芳を終え、四番目の月、紅緋になっている。
春だから、数多くの植物が萌えているだろう。
それは、この山小屋へやってきて三日目のことだった。
三人で小屋の側で薬草を採っていた時に、あの男が血相を変えてやってきた。
「た、大変だ。来てくれ」
その様子があまりにも慌てふためいているので、ルイーゼはすぐに反応した。
人命に関わることだ。
「どうしたの」
「フリーゼん家のかあちゃんが、なんか変なんだ。身重なんだが、なんか変なんだよ」
妊婦。
ルイーゼの頭が、目まぐるしく回転した。あらゆる可能性を考えながら、彼女は言った。「案内して」
「ルイーゼ、行っちゃだめだ」
「いいから、早く」
「こっちだ」
ルイーゼは外套を羽織ると、フードを目深に被った。そして、男の後ろから必死に走った。
村に入ると、フリーゼという男の家にすぐに向かった。そこには、ただ青い顔をしておろおろとしている若い男と、腹を抱えてうずくまっている女がいた。
「すぐにそこに寝かせて」
「えっ」
「テーブルよ」
ルイーゼはテーブルの上のものを乱暴にどかし、女を寝かせると、その足の間から出血しているのを確認した。そして女に尋ねた。
「今何週?」
「……十……八週」
妊娠二十二週未満。
「お腹は痛い? ここ、ちょっと押すわね」
ルイーゼは女の下腹部を軽く押した。
「つっ……」
軽度の下腹部痛、頸管長短縮を呈する。
「お湯を沸かして。手を消毒するわ」
「あ、あんた何者だ」
「そんなことは後でいいから早く」
ルイーゼはいらいらと怒鳴った。
湯が沸いて手を消毒し、女を内診した。
「……子宮口が未開大。胎児、胎芽および付属物の排出はない。……これは、切迫流産よ」
「えっ。じゃあ、腹の子は流れるのか。どうしてくれるんだ」
「落ち着いて。切迫だから、妊娠の継続は可能なのよ」
「えっ……そうなのか」
「その代わり、絶対安静よ。一日中ベッドに寝てて、お手洗いに行くときと食事の時以外は起き上がらないこと。あなたの世話なんか、言語道断よ。自分のことは自分でやるのよ。 じゃないと、奥さんも子供も死んじゃうわよ。できる?」
「で、できる。やる」
「いいわ。あったかくして、牛の乳を飲ませてあげて。腰と足を揉んであげて」
じゃあ、私は帰るわ。ルイーゼは言い置いて、そそくさと帰っていった。
「……ふう」
山小屋に帰ると、ヴィズルとエルリックが待ちかねていた。
「なんだった。どうだった」
「無事か」
「二人とも落ち着いて」
ルイーゼは両手を上げて二人を静めると、まずは水を飲んで自分の気分を落ち着けた。 よかった……できた。
久し振りに、医者の腕を揮った。もう、忘れたと思っていた。
でも、できた。忘れていなかった。あなたのことを忘れていなかったように、ちゃんと覚えていた。
「なんだったんだい」
エルリックが興味津々で聞いてきて、ルイーゼは出された酒を飲みながらこたえた。
「切迫流産よ。安静にしてれば数か月後には無事生まれるはずよ」
「流産なのに生まれるのか」
「男ってなんでみんなそうなの」
「なんのことだい」
「切迫してるってことは、実際は流れないんだよ」
ヴィズルが隣でため息混じりで言うと、エルリックはわけがわからないという顔で首を傾げている。
「お前さんはまだ若いからわからんかもしれんな」
「そういうおっさんはいくつなんだよ」
「三十三だ」
「私からすれば充分若いわ」
「違いない」
三人ははじけるように笑った。
ああ、楽しい。
ルイーゼは心の底から笑いながら、そんなことを思った。
こんなに楽しいのって、どれくらいぶりだろう。一人じゃないって、楽しい。
やがては訪れる別れの時のことを忘れて、今は笑い合う。
その日は薬草を採って狩りに行って、一日が終わった。
二、三日して、あの男から話を聞いたものか、フリーゼがやってきて、もじもじとしながら礼を言ってきた。そして、
「あ、あの……ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なあに」
「うちの奥さん、ずっと寝てるのはいいんだけど」
「うん」
「果物しか食べたくないって言うんだ」
「はあ?」
これには側で聞いているエルリックが反応した。
「そんなんでいいのかよ。もっと、肉とか魚とか野菜とか、偏りなく栄養摂らないといけないんじゃないのか、妊婦って」
「と、言われているけど、本人がそれしか食べたくないって言っているのなら、無理のないように好きなものを好きなだけ食べさせるといいわ」
「えーっ」
「そ、それでいいのかい」
「身体を冷やさないようにだけ注意して」
「え、あ、うん」
「それだけ?」
「……うん」
「そう」
じゃあね、と言われ、フリーゼはどうしていいのかわからず、結局すごすごと行ってしまった。
「ルイーゼ」
「なによ」
「いいのかよ」
「なにが」
「なにがって、あれが医者の助言かよ」
「そうよ」
「ほんとにあんなんでいいのかよ」
「そうよ」
しれっとこたえる姿は、実に堂々としたものだ。
「そ、そうなのか」
「無理に食べさせたって、食べないわ。吐いちゃうし、結局身体に悪いわよ」
「……そうか」
ヴィズルはエルリックの肩にぽんと手を置き、
「本職に任せておけ」
と一言言った。
この日は小雨が降っていて、薬草もこれでは採れないだろうと、三人は山小屋に入って暖炉の火を見つめる一日だった。
こんな日、ルイーゼは自分に医術を教えたあの男のことを思い出す。
ルイーゼ、医師は、無私で患家を助けねばならない。それが使命だからだ。例え助けられない命であっても、全力を尽くす。それが医師というものなんだよ。
そうね。でもあなたはそのせいで、自分の命をとられてしまったわ。それは、正しいことだったの?
パチパチと燃え盛る炎を見ながら、ルイーゼはぼーっとそんなことを考える。
ねえあなた。あなたは医者としての命を全うして死んでいった。でも、人として残酷な死を迎えた。それは、幸せだった? ううん、きっと幸せだった。だって、私といたもの。 そう思いたい。私と一緒にいたから、あなたはきっと満たされていた。そうであってほしい。
そんなことを考えていた、その時である。
「来てくれ」
扉が乱暴に開かれたかと思うと、火事の時のあの男が白い息を吐きながら入ってきた。「俺たちが仮住まいさせてもらってる家の男が、なんか様子がおかしいんだ」
「どう変なの」
「なんか、頭が痛いってしきりに言うし、小便が赤いって今朝」
「それは大変だ」
「すぐに行くわ」
ルイーゼは立ち上がった。そして外套を羽織って、男と共に出ていった。
村に近づくと共に、フードを被った。そして家に着くと、男と対面した。
「できれば、設備の整った場所に行きたいわ。亡くなったお医者さんのいた診療所はどこ?」
「こっちだ」
そこに連れて行かれると、小さな施設である。ルイーゼは男を座らせて、色々なことを尋ねた。
「頭が痛いのね。他に、変わったことはある?」
「とにかくだるいんだ。全身がだるい」
彼女は手を男の額に当てた。熱がある。
「……最近、歯を抜いたことはある?」
「ああ、そういえば先週虫歯を抜いたよ。糸を結んで、扉につけて、えいって」
抜歯の後に、発熱、頭痛、全身の倦怠感がある。
ルイーゼは引き出しにしまわれていた聴診器を探し出してきて、男の胸に当てた。
「胸の音を聞くわね」
そして、その音を聞いた。
「……」
心雑音があった。
「手を見せて。爪の方よ」
両手を見ると、爪の下に線のような出血が見られた。次に、瞼の裏をめくってみると、出血班が見られた。
「……これは……」
ルイーゼ、こういう時はね。
「感染性心内膜炎かもしれないわ」
「なんだいそりゃ」
血液培養をするんだよ。
「……いえ、こっちの話」
あの男の声がする。ああ、どうだっけ。どうすんるだっけ。記憶を辿る。
菌を特定するために抗菌薬を開始する前に少なくとも三回行う。そう、三回だ。
「血を採るわね。ちょっとちくっとするわよ」
ルイーゼは男の血液を採取しながら、目まぐるしく思考を巡らせていた。ここでは物資が決定的に足りない。人手が要る。
彼女は目であの男を呼んだ。
「私の仲間をここに呼んできて」
この病気は、適切な治療を行わないと致命的になる。
間もなくしてヴィズルとエルリックがやってきた。
「大きな街か国まで行って、ここに書いた物資と薬を買ってきて。医者に見せれば、わかるはずだから」
「よし、俺が行こう。エルリックはなにかあったときのために残っていてくれ」
「わかった」
ヴィズルが出ていって、エルリックが診療所に残った。
「ペニシリン系抗菌薬、どこかに残ってないかな。あったら大量投与できるんだけど」
「おれが探してわかるものかい」
「うーんどうだろう」
こういうやつ、とルイーゼが書いてみせて、二人で探してみてもどうやらそれらしいものはないようである。患者は不安げだ。
「大丈夫よ。すぐに薬が来る。そうしたら治るから」
と言い聞かせて、一旦山小屋に帰った。
まだかまだかとやきもきするうちに、五日が経った。
「帰ったぞ」
土まみれになったヴィズルが大荷物を抱えて戻ってきて、三人は村に急行した。
それで、なんだっけ。どうするんだっけ。ルイーゼは昔の記憶を辿った。
ルイーゼ、ルイーゼ。落ち着いて。こういう時はね。
ああ、そうだ。経静脈的に長期間使用するんだ。
ルイーゼはあの患者の元へ行ってベッドに寝かせ、ヴィズルが持って帰った薬を点滴した。そして、付き添いの者に詳しく点滴の付け替え方を教えた。
山小屋に戻ってほっとしていると、ヴィズルは倒れるようにそこに横たわった。
「さすがに疲れた。不眠不休で、山を越えてきた。寝させてくれ」
と言って、眠ってしまった。
エルリックとルイーゼは顔を見合わせて暖炉に火を点け、そっと小屋を出ていった。
「起こしたらかわいそうね」
「ああ、おっさんは今回の立役者だ。寝かせといてやろう」
少し散歩にでも出ようか、と言っていたら、今度はあのフリーゼという男がやってきて、「隣の家の子供が具合がずっと悪いんだよ。申し訳ないけど、ちょっと来てくれないか」 エルリックがなにか言おうとするのを止めて、ルイーゼはこたえた。
「行くわ」
「こっちだ」
疲れも見せずに、ルイーゼはその家へ行った。
「あんた、あの女じゃないか。冗談じゃないよ、こんな……」
「まあまあ、いいから。お医者なんだよ。診てもらうだけ、診てもらいなって」
フリーゼが母親をとりなしている間にも、ルイーゼは子供をちらりと見た。そして許可を得て、近くに寄った。
「お母さん、症状は」
「あ、え、熱がひどくて。全身がとにかく熱くて。それに、頭が痛いって泣くのよ」
「あとは?」
「だるいだるいって」
「そう……」
ルイーゼは一旦診療所に行き、道具を持ってまたその家に戻ってきた。
「少し血を採らせてもらいますね。坊や、ちょっとちくっとするわよ」
そして採血すると、次になにかを子供の腕に注射した。
「四十八時間、様子を見ます。二日後また来ますので、今日はこれで」
「えっ」
母親は驚いていたが、フリーゼにむかって、
「なんだいありゃ。あれだけかい。とんだヤブだよ」
と怒鳴ってみせ、手がつけられなかったという。
ルイーゼは採った血を見て、考えた。赤沈。
二日が経って、二人はまたあの家に行った。
「ツベルクリン陰性化……これは、粟状結核ですね」
「結核?」
母親は青くなって、
「大変じゃないか。隔離とか、しなきゃならないかい」
「いえ、粟状結核は小児や高齢者などの免疫不全状態の患者に好発するので、基本的に免疫のある人間には感染しません」
「うちの子はどうなるのさ」
「肺結核の標準治療に準じて、抗結核薬の多剤併用療法を行います」
「よくわかんないけど、助かるんだね」
「薬があれば」
「なんだいそりゃ」
「俺が行くよ。ヴィズルはまだ休んでる。俺が麓まで行って、薬をもらってくる。ルイーゼ、必要なものを書いてくれ」
「いいわ」
エルリックが出ていって、母親はほっと息をついた。ルイーゼは山小屋に戻っていって、まだ寝ているヴィズルを起こさないように注意して扉を開けた。
あなた、私、あなたみたいなお医者に、近づけたかしら。あなたの志を、継げたかしら。 身体はくたくたに疲れていたが、なぜか心は晴れ晴れとしていた。
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