第11話

「ごめん、ごめんな。」


坂田は、また頭を撫でてきた。


あたしは…



なんだか、緊張がほぐれた。


涙が出て来た。




ついに

殴れなくて、

というより

何で殴りたかったか、

自分でも分からなくて、

自分の中で、あやふやにした。







―――その日から、

坂田は、あたしのケアを、積極的にするようになった。


あたしの脚だけでなく、

心のケアも。


皆で、

怪我で走れなくなったら、歩くことさえなかなかキツイ話、

陸上の選手が経験する怪我の苦い話、


一番助かったのが、怪我は、医者の言う通りの期間で完治する話をした時。



でも、その数人の話を聞いた時、

そこにいた坂田が難しい顔をした。


そして、あたしに

「辛くないか。」と。


「え?何で?」

あたしは、きょとんとした。


「だって・・・



おまえ、こんな話聞いてて、

怖くないか?」

「なに怖いことがあるの、

助かるよ。参考になるじゃんか。」


坂田は、じっとあたしを見た後、

「そっか、 よかった。」


あたしの頭をぽんぽんする。


坂田は、そこから立ち去る。


あたしの頭には、

坂田の手の感触が残っている。




坂田は、あたしを特別扱いする。


嬉しい。

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