第15話

「弾いてみろ。」

ピアノのイスに座った途端、言われた。

一度立って自己紹介しようと思ってた処だった。


オレは、一週間弾いてないので、この人の前では、

弾きたくても弾けないでいた。


オレがつい、戸惑いの顔を見せてしまったのを、気違いは気付いた。


彼が舌打ちすると、

「くそったれが。

期待して、損したよ。

あぁあ、

面白くねぇわ。」


奴が部屋を出ようとする時、

オレは逃すものかと言うがごとく、

スケルツォを弾き始めた。


情熱を注ぐ。


まゆをひそめ、

気違いはオレの方をゆっくり見た。

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