第14話

人殺しのような男の目と、

愛する者が死んだ男の目の間に、

青い火花が散る。


お互い何かを感じ取る。


オレは頭を下げて、

「ぼくを、ここでピアノを習わせて下さい…!!」


だめかもしれないと思ったけど、


「いいよ。」


『気違い』があっさりと承諾した。


オレが顔を上げると、気違いは、

「突然やってきて、

いい目をしてやがる。

何があったかは訊かねえ。

オレには関係ねえからな。」


煙草に火をつけて、吸おうとする。

すると、お婆さんが気違いから煙草を取り上げた。


「生徒さん、許して下さいな。

たかしはねぇ、少し生意気なだけで、それ以外のとりえは何もないんだから。」


生意気なのがとりえ??

多分、日本語を間違っている。


承諾は、オレの心にじんときたがけど、すぐに緊張にかわった。


「死ぬ覚悟がねぇ奴が、

世界に出る資格なんてねぇ。

生半可な気持ちがないってことは、目を見たら分かる。

お前、死ぬ覚悟で来たろ。」


オレを指差して、下品に大笑いして部屋の奥に行く。

気違いはすぐ、

「何、つったってるんだ!!

ぐずぐずするな!!

3秒以内にここに来い!!」

と、怒鳴る。


オレは、すぐにお邪魔させてもらった。

レッスン室に入る時、

オレは振り返ってお婆さんに頭を下げた。

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