第9話
「誰がそう言ったの。」
急にきたので、心の準備はなかった。
けれど
この時、このチャンスを逃さないと思った。
今、香音を捕まえられるかもしれない。
毎日ピアノを彼女に聴いてもらいたいのもあって、音で語りかけていたのだ。
「だって、みんながそう言ってるもん。
どうなの?」
「両想いじゃなきゃ、告白しないだろうな。どうしようかな。」
オレがニヤニヤしてると、香音の顔はみるみる赤くなっていった。
「わ、わたしは好きだよ。」
「じゃあ、告白しようかな。」
オレは、嬉しくてニヤニヤするけど、香音は、恥ずかしそうにしていた。
でも、すぐに
「カズヤ、ごめんなさい。」
と、泣き始めた。
「私、9月にオーストリアに移るの。」
オレは目を見開いた。
…うそだろ?
「私、ずっとカズヤが好きだったけど、オーストリアのバイオリンの先生につくの。
私ひとりでオーストリアにホームステイに行くの。」
オレは茫然と、
「帰らないの?」そう訊いた。
「帰らないと思うの。
でも、何も言わないで行くの、嫌だったから、言ったけど…
悩んだけど…。」
行かないでくれなんて、
口が裂けても言えない。
一度、死んだような気持ちになった。
さみしいを通りこして、
心が空っぽになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます