第8話

しばらく高校で、なるべく香音の近くにいる事にした。


ピアノの自習時間が終わると、バイオリンの自習室まで行って、

「香音、帰ろ。」

そう声をかける。


いつも一緒に帰るよう心がける。


周りも、オレが香音に好意をもってる事に気付いているようだ。


周りにからかわれても、オレは、それがどうしたと、つき返す。


周りなんて、どうでもよかった。


オレと香音の関係だ。



…ある日、学校帰り、香音と一緒に歩き出すと、学校の近くの家から、怒鳴り声が聞こえてきた。


間もなく、中から学生が出てきた。


学生は下を俯いて、がっくりとしている。


そして、中から初老の男性が出てきて、鞄と楽譜を放り投げた。


学生は、茫然としていたが、

少しすると、それを拾って、何処かへ行ってしまった。



…?

なんだろう?

そう思っていると、

香音が、

「あのピアノ教室の先生、鬼畜なのよ。

昔、コンクールで決勝までいったんだけど、

銀賞だった事に納得いかなくて、

抗議したらしいのよ。

勝ち気もいいとこだよね。」


続けて、

「習った生徒も、続かないのよ。

2人ほど、世界大会で金賞とらせたほどの天才を育てたんだけど、生徒は怒鳴り声でいつも怖がってるみたい。」


香音は、オレをじっと見つめて、

「かわいそうだったね。」

そう言うけども、

別に同情したわけでもないから、

香音から目を逸らした。


「ところで、カズヤって私の事好きなの?」


オレは、足を止めた。

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