第2話

あれは小二の秋のある日の事だった。

缶蹴りの最中に、真琴が おしっこ~っと叫んだはいいが、わずか二秒後に漏らした。

真琴は わ~っと泣いて、その細い喉の、どっから声をあげているのか、耳がきーんしていると、享が、うるせえっ!!だまれ!!と、鼻毛を抜き、その手で真琴を引っ張って夏紀の家まで連れていく。

夏紀と俺はその後ろを並んでついていった。

「ねえねえ、奨ちゃん。耳貸して。」

夏紀がそう言うもんだから、俺は「え、何?」

と夏紀に頭を近付けた瞬間、やられた、俺の頬に彼女はキスをしたのだ。

しかも 真琴にまで見られた。俺は立ち止まったまま、よく考えた。

何が起きたのか分からなかったのだ。

その時、強引にでも お返しに夏紀のファーストキスを奪ってしまえば良かったのに、その点 まだ俺は子供だ。俺は彼女の隣を歩きだし、何事もなかったように、普通に聞いた。

「俺が初めて?」

初めてに決まっていた。

なのに、女の子に恥をかかせる質問をして、馬鹿だった。

彼女との絆が音を立てて崩れさってゆく―

 ――次の日から、夏紀は学校に来なくなった。

そして、夏紀と真琴が東京の小学校へ転校する事を聞いたのは、冬休みを目前にした十二月の事だった。

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