プロローグ

第1話

俺と夏紀は好き合っていた。

俺たちは仲が良かった。

小さい頃から俺と近所に居た夏紀、夏紀の妹の真琴と俺のダチ・享(きょう)とで よく遊んだ。


真琴は、それはもう汚いガキで、とんでもない奴だった。

春は蝶を捕まえては鱗粉を舐め 苦いと言い、

夏には公園の砂場で猫の糞をいじっては舐め臭いと言い、

秋には降った雨に残された泥水を両手でペタペタと触り 舐めてはマズイと言い、

冬にはどこから取ってきたのか 泥まみれの氷柱を舐めては 冷たいと言う。

俺の思考回路の中からは、こいつは女じゃない、何か得体の知れない存在となっていた。


そして享も俺の思っている『男のかっこ良さ』から、少しハズレていた。

四人で、鬼ごっこをしたあと、公園のベンチで享は

「オレさぁ、将来、警察官になろうと思うんだ…!!」と言った。

俺は夢を語る男、享の方を見た。

今、奴は腕組みをして空を見上げている、と 想像していたのだが、なんと奴は鼻を

ぐりぐりほじりながら空を見上げている!

右手の人差し指で やっと探り当てた鼻糞は、ベンチの俺と享との間の背もたれに、こすりつけられた。

その日から俺は、このベンチから背もたれできん。と 思うようになった。

ちなみに事件の次の日、見ると そのベンチには美男美女カップルが座っていて、二人はキスをしていた。前の日の出来事を思うと、二人のキスより享の鼻糞の方で、目を覆いたくなった。

それに比べて、夏紀は本当に女の子らしい女の子だった。

誰にでも優しくて、札幌一の美少女、いや、日本一の美少女と言っても過言ではない。俺からみたら スペシャル級だった。実は何を隠そう俺もそれなりに、女の子には人気があった。

だから夏紀と二人になると、何やら自然と近所からも小学校からも かわいいカップルにされていた。そんな周りの眼も おれはいやじゃなかった。幸せだった。

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