父親
第3話
俺の父さんが倒れたのは、俺が中一の時だった。
父さんは優しく、俺の一つ下の妹、明日香には特に、強い愛情を持っていた。
俺にしたら、妹は生意気で、可愛いと言うより顔立ちには文句は言えないものの、いつも他人を見下し、優位に立とうとしては、誰かをイジメ、よく学校から明日香の、生活態度に問題があると電話が掛かってきた。
母さんは、明日香を叱るが、小学生にして あいつは うるせえババぁだな、すっこんでろ。と言っては 母さんの怒りを倍増させ、母さんは母さんで、その怒りの矛先を八つ当たりという形で俺にあたる。
そして、父さんはというと、明日香もまだまだ子供だな、と 怒るどころか、あいつを甘やかす。
明日香にも、両親のこの性質が分かっているので、イジメも俺の被害にも、なんら変わりない。
そんな明日香に、人間らしい一面が出たのは、その父さんの死を受け入れる時だった。
あいつが、小6の時だった。
父さんが死んで半年後の雪の季節、俺が真夜中に起きたとき、いつもサイドボードに置いてあった、父さんが生きてた頃のディズニーランドの家族旅行の時の写真が、なくなっていた。同時に、明日香の部屋のドアの隙間から明かりが漏れていた。
小さくすすり泣く声。初めてあいつを弱弱しく感じた。
次の日の、あいつの赤く腫れた目を見た時、動揺が隠せなかった。
俺がプライドの高い明日香にしてやれる事といったら、それに気付かないふりをして、あいつの頭を軽く手で叩くぐらいだった。明日香は、何だよ、と ドスをきかせ言ったが、なんでもねー。と、俺はそ知らぬふりをした。
それから、2ヵ月後、経済的理由で、10年続いたこの一軒家を売り払い、俺たち3人は、アパート暮らしをし始めた。
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