6.密会の兆候

 探偵に依頼してから数日後、鈴木から連絡が来た。


「奥様、ご主人が明日、出張だと言ってますか?」


「はい。会社の研修で一泊するそうです。」


「実は、その出張先が怪しいんですよ。どうもビジネスホテルの予約が確認できない。代わりに別のラブホテル周辺でクルマの目撃情報があるんです。」


 電話の向こうで探偵が静かに説明を続ける。私は確信に近い感覚を持ちながら、それを聞いていた。やはり圭介は美咲と会うつもりなのだろう。


「会社の同僚にそれとなく確認もしたんですが、他の人はその研修に参加しないらしいです。ご主人ひとりだけの研修なんて、ちょっと不自然ですよね。」


「……そうですね。」


 怒りよりも、呆れと悲しさが先に立つ。どこまでも嘘を重ねて、私と子供たちを欺きながら、堂々と浮気を楽しむなんて。


(絶対に許さない。もっと確実な証拠を掴んで、社会的にも破滅させてやる。)

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