5.探偵事務所への依頼
翌朝、いつも通り子供たちの朝食を作っていると、玲奈が楽しそうにパンを頬張りながら言う。
「ママ、今日のご飯、おいしいね!」
何も知らないあどけない声に胸が痛む。しかし、私は笑顔を作った。
「ありがと、玲奈。いっぱい食べてね。」
悠真はそんな私の様子を横目でちらりと見て、何かを言いかけたが、結局黙ったままだ。普段から少し物静かな性格だが、鋭いところがある子だ。私の抱える不安を察しているのかもしれない。
子供たちを学校や保育園へ送り出すと、私は圭介のクローゼットを開け、車を点検し、わずかな手がかりを求めた。けれど彼は用心深いのか、決定的な証拠は見当たらない。ラブホテルの領収書や怪しげなメモ……そんなものが落ちているはずもない。
そこで私は意を決して、以前から気になっていた探偵事務所に連絡を入れた。元同僚が夫の浮気調査で実績を認めていた事務所だ。
「お世話になります。高橋桜子と申します。夫の浮気調査をお願いしたくて……はい……そうなんです、相手は私の親友かもしれなくて……。」
電話越しの担当者は静かに話を聞き、落ち着いた口調で対応してくれた。後日、探偵事務所へ出向き、夫の行動や仕事のスケジュール、親友との交友関係などを洗いざらい説明する。
「これはつらい状況ですね。ですが、奥様が手元にお持ちの動画だけでも十分証拠になりそうですよ。ただ、法的手続きを考えるなら、より確固たる証拠を揃えたほうがいい。ホテルの出入りの写真や、メールやLINEなどもあれば確実ですね。」
探偵の鈴木直樹(すずき・なおき)は、優しげな目でそうアドバイスしてくれる。私はうなずきながら、彼に夫の行動を追跡してもらう計画を立て始めた。
「圭介は仕事のフリをして出張やら残業やら言ってますが、本当かどうか怪しいんです。車で移動することが多いので、どこへ行ってるか調べていただきたい。あと、もし可能ならスマホのデータも……。」
鈴木はメモを取りながら頷く。
「スマホはパスコードやセキュリティがあるので難しいかもしれませんが、まずは車と行動パターンの監視から始めましょう。ホテルや密会場所が分かれば、写真で押さえるのがいいですね。」
私は静かに息をつき、これから始まる長い戦いに身構えた。もう後には引けない。彼らを裏切りの報いを受けさせるため、あらゆる手段を使う。
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