7.子供たちの戸惑い

 その夜、子供たちを寝かしつけたあと、私はリビングで考え事をしていた。圭介は明らかに浮気をしている。相手は美咲。今のまま何も言わず耐えていても、彼らが裏切りを止めるわけではないだろう。


 すると、寝室から悠真が顔を出した。


「ママ、まだ起きてるの?」


「ごめんね、うるさかったかしら。」


「あのね……パパとママ、仲悪いの?」


 10歳の子供にそこまで心配をかけてしまっているのかと思うと、胸が痛む。しかし、ここで何かを話せば悠真が混乱するだけだろう。私は少し迷ってから、彼をリビングのソファに座らせた。


「今はね、ちょっといろいろあるけど、大丈夫。ママがちゃんとするから。」


「パパ、最近全然遊んでくれないし、スマホばかりだし……。僕たちのこと、嫌いになっちゃったのかな。」


「そんなことはないわ。パパなりにお仕事が大変なだけかもしれない。でも……心配かけちゃってごめんね。」


 悠真は黙って俯く。私は頭を撫でて、彼を寝室へ戻してあげる。子供たちにとっては、自分たちの存在を無視されたように感じてしまうだろう。圭介がいま何をしているかも知らずに、ただ寂しさを抱え込む子供たち。それを思うと、私の怒りはさらに燃え上がる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る