多数の怪異に取り憑かれた俺が、どうにかして引き剥がすべくダンジョンに潜ってみた結果

コータ

第1話

「また騙された……ちくしょう」


 目の前にいる女は、普通の人じゃなかった。それが分からなかった自分が悔しい。


 俺はイライラしつつ、夜の住宅街を足早に進む。


「ねえ、お兄さん」

「はいはい。俺、ちょっと忙しいから」

「待ってお兄さん。私、綺麗?」

「いや、マジで忙しいんだって」


 マスクをかけた女が後をついてくる。俺はおっさんだが、訂正するのもしんどい。


 こりゃ絶対に口裂け女だ。最初は道に迷った人が話しかけてきたのかな? なんて考えてたけど全然違った。


 ちょっとばかりお人好しな自分が嫌になる。それだけじゃなく、無駄に霊感? 的なものがある自分の体質にも嫌気がする。


 このまま家に帰るとしんどいので、しょうがないからあそこに寄るしかない。今じゃ誰もが知る不思議な世界、ダンジョンに。


 いろいろと説明するのが大変な事態だが、まずはダンジョンについて軽く話しておこう。


 ダンジョンっていうのは今から約五年前、世界中に現れるようになった不思議な迷宮で、大抵は洞窟みたいな外観をしてる。


 中に入ってみれば魔物っていう、RPGにありがちなバケモン達がわんさかいて、そいつらは倒しても倒しても時間が経てば復活する。


 こうして聞いてみると、嫌な場所でしかないじゃんって気がするが、実は恩恵もあるんだ。


 まず、ダンジョンの中には無限の宝がある。そして、人間はダンジョンで魔物を倒しているうちに、常識では考えられない力を身につけるようになった。


 他にもいろいろメリットがあるが、ざっくり言えばこういうのが人々の心に刺さったというわけだ。


 そして世界は今、未曾有の探索ブームらしい。しかも実況配信をしている人も大勢いて、まさに新たな時代が始まっている。


 でも俺はそういった事情にはあまり興味がない。一応ダンジョン探索を嗜むおっさんフリーターではあるけれど。


「お兄さん」


 背後の圧が急に強まった。口裂け女が捕まえてでも例の質問をしたいらしい。


「だから用事があるんだって。他の奴にしろよ」


 面倒なので捕まらないように、俺は早歩きの速度を上げた。


「……なっ? は、は、はやい!」


 狼狽えてる声がした。向こうはそれなりに全力で走っているらしい。でもまあ、この程度なら大丈夫。


 でも気をつけないと。本当に撒いちゃったら、ダンジョンまで誘導できないし。


 そう……俺はこの怪異を、ダンジョンまで連れて行こうとしているのだ。


 実はこれまでの人生で、なぜか数えきれないほど怪異と出会い、そして付き纏われてきた。


 大体の場合は除霊をしてもらうと効果があるんだけど、それでも全然効かない奴もいたりする。


 そういう奴には長い間付き纏われて迷惑千万だったが、ある時ふとダンジョンにそいつらを連れて行ったところ、綺麗さっぱりいなくなったのだ。


「待てええええー!」


 おー、口裂け女のやつ頑張ってるな。


 しかし、待てと言われて待つ奴はいません。俺は足を止めずに、近場にあるダンジョンへと向かっている。


 いつもは十人くらい溜まってからダンジョンに行ってるが、一人しかいないとちょっとめんどいかも。


「私を見てええええ」


 いや、やっぱ今日でいいやと俺は思った。口裂け女は一人でも充分うざい。さっさと消えてほしい。


 多分怪異っていうのはアンデット系になると思うんだけど、ダンジョンで鍛えた身でも倒せなかったりする。というか、倒してもなぜか復活したりする。


 だからこうして、日々厄介な怪異が溜まるとダンジョンに行っている。


 暗い住宅街を抜け、公園に入った。ぽっかりと空いたダンジョンの穴が遠目に映る。


 もうすぐだと思っていた時、唐突に電話が鳴った。知らない番号からだ。とりあえず出てみるか。


「はい、もしもし」

『私メリーさん。今から行くね』


 ガチャ、という音がして通話が終わる。


「げ、あのメリーさんかよ」


 こりゃ今日は特別厄介なのに絡まれてるぞ。


 フリーターのおっさんなんか相手にして、こいつらそんなに暇なのかよ。


 ◇


『私メリーさん。今、本屋さんの前にいるの』

「まだ全然遠いな」

『え?』


 ようやくダンジョンに入った俺は、一階を歩きながら通話に応じる。


「吉祥寺の公園にあるダンジョンまで。ダッシュで」

『吉祥寺の公園。ダンジョン……ダンジョン!?』


 今度は俺から通話を切った。必要なことは伝えた。


 こうしている間、一階フロアに現れるゴブリンだがスライムだか、巨大ナメクジだかっていう連中が襲ってきたが、全て片手で倒していた。


「ね、ねえ……」


 ゼエゼエ息を切らしながら、口裂け女が少し後ろをついてきてる。どうやらまだ消えないみたいだ。


 ってか、口裂け女って息切れとかするのか。それは知らなかった。


「あ、そうだ。配信しておこう」


 ダンジョンに入るのだから、せっかくなので実況配信もしたほうがいい。


 俺はリュックに入れていた、配信用ミニカメラを取り出した。続いてハーネスを装着し、胸の辺りにカメラを設置。


 しばらくして実況が始まる。と言っても、俺は自分の配信なんて全く気にしない。


 今や探索配信者は腐るほど溢れかえっている。俺なんてまず見向きもされていない。


 少しして、地下一階へと降りてみた。魔物は徐々に強くなってくるが、この辺りならまだまだ。


 骸骨剣士やゾンビ、巨大な蛾、それから殺人熊といった魔物を、さっきと同様素手で倒していく。


「あ……あの」


 背後にいる口裂け女のトーンが、妙に下がっている。そろそろ消えるのか?


「あなた本当に、人間?」

「は? 人間だが」


 失礼な。お前にだけはそんなこと言われたくないわ。


 ってか早くいなくなってくれないかな。なんて考えていたら、リュックに妙なものが巻き付いていることに気づいた。


「あれ? なんだこれ、髪か。……あ!」


 まさかと思い、リュックを広げて中を確認すると、いつの間にか着物を身に纏った人形が入っていた。


「こいつ、髪が伸びる人形やんけ」


 いつリュックに入ってたんだろ。今日はダンジョンに潜って正解だったわ。そんなことを思っていたら、また電話が鳴った。


「もしもし」

『私……メリーさん。今……ダンジョンの前にいるの』

「入ってきて」

『えー』

「えー、じゃなくて。俺の後ろに来ないとダメなんだろ」

『えぁっと……怖いから来て』

「は?」


 何を言い出すんだと、正直驚いた。なんでメリーさんをお迎えに行かなくてはならんのだ。


 しかもその理由が怖いとは何事だ。迎えに行ってからまた奥に進むとか、完全に二度手間じゃん。


「ダメだ。もう地下二階に来てるから、さっさと来て」

「でもぉ。メリーさんはダンジョンなんて初め、」


 言い訳が始まりそうな雰囲気だったので、通話を切った。


 さて、奥に進むとしようか。とはいえ、地下二階まで降りてきたら大体用事は終わる。ほぼ全ての怪異は、この辺りで消えてしまうからだ。


 ◇


「私綺麗? 私綺麗? 私綺麗? 私綺麗?」


 おかしい。地下二階を進んでいても、このウザい奴がいなくならないんだけど。


 でも捕まえてくるようなこともないし、ひたすら横で質問を繰り返すだけ。


「無視しないで」

「知らん。って言うか、見た感じ俺のほうが年上なんだから、敬語使いなさいよ」

「私、綺麗ですか」

「知らん」


 そう言いつつ、俺は手刀で人形の髪の毛を切っていた。放っておくと伸びてくるからめんどい。


 んで、とりあえず襲ってくる魔物達を蹴って倒す。


 別に俺は空手とかキックボクシングの経験があるわけじゃないが、ダンジョンに潜っていたら自然と身についてきたから不思議だ。


 相手は四メートルの巨大蜘蛛とか、見るからに薬キメてそうな黒いフードの魔法使いとか、見上げんばかりのトロルとか、だんだん派手になってきた。


 この辺りは中層と呼ばれている階層で、普通に生きていたら絶対にお目にかかれない魔物ばっか出てくる。


 魔物が悲鳴を上げながらぶっ倒れていく姿を見て、なぜか口裂け女が叫んだ。


「あ、あの! もう怖いんですけど! 質問に答えてくれませんか!」

「何ぃ!?」


 この発言にはビックリした。なんでお前が怖がってんの。怪異としてのプライドはないのか。


 っていうか、まだ消えないのかよ。


 それと、リュックの中がガサガサ揺れている。どうやら人形も落ち着きをなくしているらしい。


「もうちょっとだから、我慢して」


 流石に下層までいったらこいつらも消えるだろ。お前らのお願いなど聞かん。


 ビビり怪異どものウザさがマシマシになった時だった。また電話が鳴っている。


「もしもし」

「ヒィイ! 私メリーさん!」

「急にでかい声出すなよ、耳がキーンとしたわ! どこまで来た?」

「い、今ぁ! あなたのっ! 後ろにぃい!」


 あ、確かに背後から声がしてるわ。こいつもこいつで、なんで中層まで来てるのに消えないのだろう。


 すると、口裂け女が後ろにいるメリーさんを見てハッとした顔になり、ダッシュで寄っていった。


「メリーさん。私、綺麗?」


 この承認欲求モンスターめ。とうとう人間以外にも手を出したか。


「知らない! お兄さん、こっち向いて。早く!」


 俺は無視して下層への階段を降りていった。


 ◇


 おかしい。どう考えてもおかしい。


 俺たちは下層や深層を超えて、いよいよ一番下にあたる極層と呼ばれる地点にまで到達していた。


 流石にここまで来たら、こいつら消えるはずなのに。


「私メリーさん。ねえ、早く上にあがろーよ。怖いよお」

「お人形さん、私……綺麗?」


 金髪少女メリーさんは、帰りたいしか言わない駄々っ子になった。こっちが振り向くという定番の流れなど自ら捨てて、すぐ隣を歩いている始末だ。


 それと口裂け女は、ビビり過ぎてなぜか人形にまで話しかけてる。ちなみに人形はというと、変わらず定期的に髪の毛を伸ばしてくるからやっぱりウザい。


「こうなったらダンジョンごと破壊しちまうか。ボスをやったら消滅させられるらしいんだけどな」

「じゃあやっつけて」


 メリーさんは簡単に言いやがるけど、俺だけじゃ厳しいような気がする。


 ちなみに今このフロアには、エンシェントドラゴンとか、ブラックギガースとか、ランプの魔王とかアルティメットキメラとか、なかなかに強そうな名前の連中がいる。


 まあでも、強そうなのは名前だけだ。普通に素手でいける。でもボスはきっとヤバいに違いない。


 俺はダンジョンエンジョイ勢なので、最深部のボスと戦ったことはなかった。だから自信がない。


 そしていよいよ、ボスとやらが見えるところまで辿り着いていた。


 まさに最終決戦の場所、って感じの大部屋が見える。柱の影から、俺たちはそのボスを観察していた。


「綺麗じゃない……あんなの全然綺麗じゃない……」


 怯えた声で口裂け女がブツブツ言ってる。


「私メリーさん、帰っていい?」

「ああ、帰っていいよ」

「やっぱり残るぅ!」

「じゃあ言うなアホ」


 リュックの中の人形がガタガタ揺れてる。ビビってんなお前ら。しかし、俺も流石にあいつは厳しそうだ。


 そのボスキャラは、上半身が金剛力士像みたいで、しかも腕が六つある。それぞれに剣や槍、杖みたいなものを持っていた。


 さらに下半身はというと、黒い馬みたいになってる。ケンタウロスみたい感じだ。


 あれは強そうだし、俺だけじゃ多分厳しい。そこで今回、少々心は痛むが一つの提案をすることにした。


「アイツ倒したら終わりだから、お前ら手伝ってよ」

「あんな人と戦ったら、きっと醜くなるので嫌です」

「そう言わずに頼むよ」


 口裂け女は速攻でお断りの空気。ナルシスト感凄い。


「メリーさん疲れた! 帰りたい」

「だからアイツを倒したらすぐに帰れるって。手伝ってくれよ」

「……どうするの?」


 お、メリーさんは聞いてくれそう。一応リュックの中にいる人形にも聞いてみたが、揺れているだけでよく分からん。


 とにかくこの後、嫌がる口裂け女を説得しつつ、みんなに作戦を伝えてみる。


 実際、ここに来るまでに連中がどんな力を有しているか確認済みだ。


 ってか、どこでこんな力を身につけたのか、という疑問がある。でも、多分人間と同じで、ダンジョンで魔物とやり合ううちに身についたのだろう……きっと。


「口裂けには武器を貸してやるから、俺と一緒に奴にアタックを仕掛けろ。ああそれと、最初に電撃を使ってくれ。メリーさんは俺と口裂けにバフをかける。あと人形、お前はボスに接近したら、髪を伸ばして巻きつけ。OK?」


 ここでも口裂け女は嫌そうな顔。


「私、綺麗って言ってくれない人の言うことは聞けないです」


 頑固だなマジで。でも、こいつ綺麗って言ったら襲ってくるんじゃなかったっけ?

 だったらちょっと違う意味で言えば良いか。


「あーはいはい可愛い可愛い」

「はう!?」

「はい。じゃあ決定ね。メリーさんは」


 メリーさんは帰りたい一心なのか、コクコクと頷いてる。人形は意思を確認しようがないので、俺たちの共闘は決まった。


 とりあえず、口裂け女に武器を渡しておく。


「あの、これって……?」

「さっき拾った棍棒だ。これさえあればいけるだろ」

「へ? いやいや! 無理ですよぉ」

「大丈夫だ。俺なんて素手だぞ。よし、行くぞ!」

「待ってください! まだ、心の準備がーーー」


 口裂け女のメンタルが整うのを待ってられない。とりあえず俺は走り出した。


「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」


 なんか嬉しそうなメリーさん。それ言いたかったんだよねずっと。


 人形が中でゴソゴソしまくってる。ちゃんと役に立ってくれるといいが。


 俺たちが突撃してきたことを察知し、ボスはすぐに応戦態勢を取ってきた。ただ、こっちがほぼ先手を取れるはずである。


「口裂け、火を——じゃなかった、稲妻だ」

「はぃいいーー!」


 一瞬怪獣と間違えて、火を吹けって言いそうになっちゃった。すでにビビり過ぎてキャラ崩壊してる口裂け女が、なぜかダンジョン内で使っていた電撃を放つ。


 ビリビリビリ、という分かりやすい光線上の魔法が、ボスの全身を包む。


 だが敵もさるもの。「なんですかそれは?」と言わん顔で固まっただけだ。


 そしてすぐに武器をジャキッと構えて、こちらに突っ込んでくる。剣や金槌を振り回し、槍で串刺しを狙ってくる。


 なかなかに速いじゃん。だが、今の的は二人になっているはずだ。俺はかわしながら、懐に入ろうと試みていた。そんなタイミングだったのだが。


「いやぁあああ!」


 口裂け女がぶっ飛ばされ、ダンジョンの壁に激突してしまった。綺麗な顔に怪我はなくて良かったね。


「私メリーさん。今、あなたのお手伝いをしてるの」


 少しして、体全体が熱くなり、かつ軽くなってきたのが分かった。メリーさんのバフがかなり効いている。


「いよっし! これでどうにかするぞーー」


 スピードが増したことで、ボスの波状攻撃の間に入り込むことができた。ここでパンチ、パンチ、パンチ。


「ヲボボボボ!?」


 ボスが声を上げて苦しがってる。なんてハスキーボイスなんだ!

 ……いや、声はどうでもいいか。


 しかしここで不測の事態が。六本だと思われたボスの腕が、なぜかもう一本あって、大剣を持って振り下ろしてきた!


 背中に一本ながーい隠し腕があったらしい。ずるいやっちゃ!


 ってかこれはかわせないぞ、と面倒な展開を感じていた俺だったが、なぜか奴の腕が急に止まったことに気づいてハッとした。


 なんとリュックから髪の毛が伸びて、渾身の一撃に巻きついてギリギリで止めていたのだ。やるな人形!


 ボスは苛立たしげに腕を振り上げ、髪がブチブチと切れる。大量の抜け毛不可避!


「オッケー! じゃあこれで、終わり!」

「ヲボボボボボァーーーー!?」


 全体重を乗せた渾身の右ストレートを、イカつい顔面にぶちこんでみた。奴の体はくるくる回転しながら壁に激突……しただけじゃなくて、大穴が空いて見えないところまでぶっ飛んでいった。


 すると、ダンジョン全体が白く光り始める。ボスは即死だったようで、早速だが消滅が始まったのだ。


 白い光が増していき、全てが霞んでいく。


「ああ、私……綺麗……」


 口裂け女が恍惚とした表情で言った。ぶっ飛ばされていよいよ狂ったか。


「地上? メリーさん地上に行けるの?」

「……まあ、ダンジョンは消えるから、地上には戻れるかな」


 そもそもこいつらは消えるんだよな……珍しく罪悪感を覚えた俺は、メリーさんに歯切れの悪い回答をした。


 リュックの中からは、何の反応もない。もしかしてハゲちゃったのかな。


 なんて心配をしていると、いよいよ目の前が真っ白に染まる。俺のダンジョン探索は、意図せぬ最深部のボス撃破という形で終わった。


 ◇


 少しして、俺は地上に戻ってきたことに気づいた。


 白い光が消え去り、公園内に蛍の光みたいなのが沢山浮いている。いやー幻想的だね。


「おっと。配信続けてたわ。もう終わろうっと」


 俺はすぐに配信を切り、カメラの電源をOFFにした。一瞬だけど同接が一億くらいで表示されてたが、そんなわけないので多分見間違いだと思う。


 あいつらもようやく消えたことだろう。


 はーめんどかった。明日のバイトだって早いのに。そう思いつつ帰ろうとしていると、背後に何かの気配が。


「あれ?」


 振り向いてみると、木陰に変な女がいるんだけど。


「お兄さん、ようやく戻れましたね。ところで私、綺麗ですか」

「げ!」

「げ……ってなんですか。答えてください」


 口裂け女……と思われるやつが怒った顔で寄ってきた。


 というのも、裂けていたはずの口が普通になり、やけに綺麗なお姉ちゃんになっていたからだ。でも服装はそのまんま。


「なんでお前いんの? ダンジョンハシゴはキツいし、もう帰るか」

「待ってください。私、綺麗ですか」

「さあ、どうなんでしょうね」


 めっちゃ綺麗になっとるわ。でもなぁ、言うと襲いかかるんでしょ?


 でも、まあウザさは半減したからいいかな。とか思っていると、また背後から声がする。


「私メリーさん、今……あなたの後ろにいるの」

「お前もかよ!」


 なぜ消えてない? と不審に思い振り返ってみると、金髪の可愛い娘がくっついてきてた。ドロドロしたオーラが、むしろキラキラオーラになっている。


 どうやらメリーさんも姿が変わったようだ。


「俺はもう家に帰る。他の奴のところにいきな」

「メリーさん、今からあなたのお家に行く」

「いや、いいってば」


 一見すると人間に戻ったっぽいけど、多分怪異なんじゃねえかな。こういうのレアケース過ぎだろ。


 そういえば、人形は?


 と思った時、背中に何かが乗ってきた。


「あたしもいく」

「「しゃ、喋った!?」」


 不覚にも口裂けだった女とハモってしまう。


 おんぶしているそれをスマホのミラーアプリで確認してみると、着物を着た銀髪の子供だった。黒かった髪色と長さが変わってる。ショートボブくらいになった。


 ハゲたのかと思ったけど、違ったのか。まあそれはそれとして、三人も家に来られるのは普通にやめてほしいんだが。


「あのぅ。さっき私のこと可愛いって言ってましたよね。でも、私可愛いって言われるのは好きじゃないんです。私……綺麗ですか?」

「私メリーさん。お兄さんの家、楽しみ」

「おうち行く。おうち」


 こいつらマジで家に来るつもりかよ。


 めんどくせーと思いつつ、俺は一人暮らしのマンションに帰っていく。


 次はお祓いかなぁ。とか思い悩みつつ、見上げた月はなぜかいつもより明るい気がした。

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