第21話:新たなる軍編成
「今回貴官らを招聘したのは通常編成の為ではないのだ。」
カールトンの言葉に三人の頭上に?マークが浮かぶ。
「それはどういう事でしょうか?閣下。」カールが訝し気に問う。
「確かに貴官らもこれだけ聞いても訳が分からんだろうから、順を追って説明する。」
カールトンがPCを操作しながら説明を続ける。
「今回、陸軍が自前の艦隊を編成することになった。海洋戦力がメインである我が国では陸軍は国内の島々に分散されて配置されるか、海軍の戦力に依存して行動するのがメインで、独自の海洋戦力はもっていなかった。これは海兵隊も同じだ。」
モニターに図を映し出しながら説明が続けられる。
「今まではある程度平和な時代が続いていたからそれでもよかったが、今回のメルセリアやユールハイドとオーザリクの対立先鋭化もあって、軍編成の根本からの見直しが入った。」
カールトンがPCを操作すると、モニターの軍編成表が変化していく。
「つまり、陸軍と海兵隊に独自の海洋戦力を持たせ、機動力と海軍に依存しない軍事力の確保だ。」
手を止めたカールトンが三人の方に向き直り、編成の目玉を告げた。
「そこで、現行海軍は八個艦体が制式編成だったが、これを六個艦体に削減し艦艇数を大幅に減らす。」
「しかしそれでは大幅な軍事力低下では?」キャメルが口を挟んだが、カールトンは軽く手を挙げそれを制すると言葉をつづけた。
「確かにそれだけではな。だが、削減するとはいえ国内艦艇の総数は変わらない。むしろ新造も含めれば少し増える。巡洋艦、駆逐艦、揚陸艦や陸上兵器輸送艦等の部隊で編成される三個艦隊を陸軍3個師団にあてがうのだ。輸送艦は戦車や装甲車を輸送するための専用艦が新造される。」
カールトンが言葉を続ける。
「そして海兵隊は護衛として巡洋艦や駆逐艦が配属されるが、揚陸艦については新型の高速強襲揚陸艦のみで編成される『高速揚陸部隊』とでもいうべき部隊編成になる。これは陸軍の揚陸部隊は陸上兵器の輸送も行うが、海兵隊は点の確保から面制圧に特化した、兵員と高機動型装甲車レベルの機動力最優先の輸送が重視されるためだ。」
「人員配置については、海軍所属の人員が船ごと陸軍と海兵隊に一時的な出向になる。いずれは陸軍と海兵隊だけで艦隊運用もしてもらう為、技術指導の意味合いもかねての出向だ。」
更に説明の言葉が続く。
「今回、第四艦隊のロシード中将と第八艦隊のアルレオラ大将の両名が定年で退役する。それに合わせての再編だ。」
「あのお二人がですか?!ベテラン中のベテランなのに・・・惜しいなあ」キャメルが残念そうにぼやいた。
「私もあの二人の退役は軍の損失と思っている。軍部が顧問での慰留もしたみたいなのだが、田舎に帰って静かに暮らしたいらしくてな、固辞されてしまったらしいのだ。」
「それなら仕方ないよね、あの二人最近は『早く退役してゆっくりしたい』ってぼやいてたし。じいちゃんみたいに可愛がってもらってたから残念」
アヤメが残念そうに苦笑した。
「お前は本当に誰にでも懐くな・・・まぁ、それはともかくとして彼らが退役するにあたり後任の司令官は置かずに艦隊数を減らす代わりに、陸軍と海兵隊の戦力増強を行ったのだ。武力衝突を見越しているという事だ。」
「解体されるのは第七、第八の両艦体で、第七艦隊のアドラー中将は第四艦隊司令官にスライドする。解体された二個艦隊と残存する六個艦隊から抽出した艦艇を陸軍と海兵隊に振り分ける。余った艦艇については国内防衛の独立部隊が持っている老朽艦と入れ替えだ。老朽艦は武装解除の上で民間払い下げだそうだ。」
カールトンが一気に説明し、一旦席を立ち部屋の隅に置いてあるウォーターサーバーで喉を潤す。
「ふぅ・・・」一息つくと再び席に戻る。
「そして、陸軍と海兵隊は独自の海洋戦力を編成され、それぞれ三個師団が再編成される。海軍の六個艦体と合わせて合計十二個軍団となる。これで対外的な脅威に対抗するための編成になっているという事だ。」
カールトンが説明を終わると、ラークが質問をした。
「随分大胆な再編になりましたね・・・それで、本題ですが我々はどういう任務になるので・・・?」当然の質問である。
隣国の内乱についての噂、そして武力衝突を前提とした軍の再編成、そして司令官直々の指令による三人の招聘。何かあるかもしれないと考えてもおかしくはない。
カールトンもうなずく。
「当然の質問だな。貴官らは事前に所属先の概要説明を受けていたかもしれんが、基本的に間違いではないが遂行してもらう任務は独自性が強い事も多いだろう。今後の情勢如何では現在の指揮命令系統から完全に離れることになると思うから心しておくように。」
「・・・それは閣下の直轄になる可能性があるという事ですか?」
「そうだ、ラーク。」
「結構重い任務になりそうですね・・・その場合キャメルとアヤメも行動を共にするような任務になる事もあるという事ですか?」
「そうだな、三人で行動してもらう場合もあるかもしれん。」
「私は別にいいけどねー、それより具体的にどんな任務になるのかわからないから、きちんと教えてほしいよね。ラークとキャメルもそう思うでしょ?」
「そうだな、俺としてもどんなことをするのか教えてほしいと思う」キャメルも同調し、カールトンに話すように無言で促した。
「わかった、あくまで『そうなった場合』で良ければあらかじめ話しておこう・・・」
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