第20話
私はかつてサー・ガレンと呼ばれた者だ。何度も生まれ変わり、エリンを探し続けてきた。疲れ果て、絶望に沈みながらも、大魔法使いの噂を頼りにこの山の頂へと辿り着いた。
大魔法使いの名がエリンだと知った時、私の心は激しく揺さぶられた。まさか私のエリンが、時と運命を操るほどの力を持つ存在としてここにいるなんて。そして今、彼女の姿を目の前にして、さらなる確信が私の胸を貫く。エリンもまた、私と同じように何度も生まれ変わっていたのだろう。
彼女が大魔法使いとしてここに立つ姿を見ると、その可能性が現実として迫ってくる。
私が騎士として、詩人として、鍛冶屋として、様々な人生を生きて彼女を探し続けたように、彼女もまた別の形で、別の時の中で生きていたのだ。
かつてのあの小さな魔法使いの少女は、ただの十歳の子供ではなかったのかもしれない。彼女の魂も、私と同じように輪廻の輪に囚われ、繰り返し生まれ変わりながら何かを求めていたのだろう。そして、その果てに、彼女は大魔法使いという存在へと至った。
私は彼女を見つめる。目の前にいるエリンは、かつての少女とは異なる威厳と力をまとっている。
「エリン…お前も、私と同じように輪廻を生きてきたのか?」
声に出さずとも、私の心はその問いを繰り返す。彼女が大魔法使いとしてここにいるなら、彼女はどれだけの人生を経験し、どれだけの時を越えてきたのだろう。私が彼女に会えない世界が増えたのは、彼女がこの形に辿り着くための旅路だったからなのか? 私の疲弊しきった魂が諦めかけた時、彼女はすでに私を待つ場所に立っていたのか?
私は一歩近づく。彼女の顔を見つめながら、過去の全てが繋がっていく感覚に襲われる。私が漁師として海を眺めた時、彼女はどこかで魔法を研ぎ澄ましていたのかもしれない。私が戦士として剣を振るった時、彼女は別の世界で運命と向き合っていたのかもしれない。そして今、ようやく私たちは同じ場所に立っている。彼女もまた、何度も生まれ変わりながら、私との再会を待ち続けていたのだとしたら。
「エリン、お前は私を覚えているのか?」
私の声が震える。彼女が大魔法使いとしてどれほどの力を得ようとも、私にとって彼女はあの少女であり、私の妻であり、私の魂の欠片だ。彼女も私と同じように輪廻を生き、苦しみ、探し続けてきたのなら、この瞬間がどれほど尊いものか。私は彼女に手を伸ばす。彼女が私を見て、微笑んでくれることを願う。
エリン、お前がここにいるなら、私たちの長い旅は終わりを迎えたのかもしれない。生まれ変わりの果てに、ようやくお前と再び一つになれるのかもしれない。
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