第21話

 私はかつてサー・ガレンと呼ばれた者だ。


 何度も生まれ変わり、エリンを探し続け、疲れ果てた魂を最後の希望に賭けてこの山の頂に辿り着いた。


 大魔法使いがエリンと名乗ると知り、私の心は彼女が私のエリンであり、同じ輪廻を生きてきたと確信していた。


 彼女の最初の言葉、



「あなたは随分長い間旅をしてきたようだね」



 私の旅路を理解し、私を待っていてくれたのだと期待が膨らんだ。

 だが、次の言葉が私の全てを打ち砕いた。



「私はお前のエリンではない。」



 その一言が、私の心に冷たい刃のように突き刺さる。私は立ち尽くし、彼女を見つめる。彼女の瞳は穏やかで、どこか遠くを見るような光を宿している。私のエリンではない? どういうことだ? 彼女の名はエリンだ。大魔法使いエリン。


 私の魂が求め続けたエリンと同じ名を持ち、彼女の声に似た響きを持ちながら、彼女は私のエリンではないと言うのか?


 「何…?」 私の声は震え、言葉にならない。疲れ果てた体が再び膝をつく。頭が混乱し、心が引き裂かれる。私は彼女に手を伸ばしていたが、その手は宙を彷徨い、力なく下がる。「お前がエリンでないなら…なぜここにいる? なぜ私をこんな場所まで導いたんだ?」 私の問いかけは虚しく響き、彼女の言葉が真実であることを受け入れたくない気持ちが胸を締め付ける。


 彼女は静かに私を見下ろす。その表情に、憐れみとも慈悲とも取れる何かがある。私は必死に考える。彼女が私のエリンではないなら、私が探し続けたエリンはどこにいる? 私が何度も生まれ変わり、輪廻の中で追い求めたあの少女は、結局どこへ消えてしまったのか?


  この大魔法使いエリンが別の存在だとしても、なぜ私の魂は彼女に引き寄せられたのか? 偶然ではない。運命が私をここへ導いたのだ。それなのに、彼女は私のエリンではないと言う。



「長い旅だったことはわかるよ。」



  彼女が続ける。



「お前が誰かを求め続けたことも、その苦しみも、私には見える。だが、私はその者ではない。お前が探すエリンは、私とは別の魂だ。」



  彼女の言葉は優しいが、その優しさが私をさらに深く突き落とす。私は絶望の中で叫びそうになる。



「なら、お前は誰だ? なぜエリンと名乗る? 私のエリンはどこにいるんだ!」



 私の声は荒々しく、涙が溢れる。

 彼女は静かに首を振る。



「私はエリン、大魔法使いエリンだ。だが、お前が愛し、探し続けたエリンとは違う。お前が求める者は、すでにこの輪廻を超えた場所にいるのかもしれない。あるいは、まだお前の知らない世界で待っているのかもしれない。私はそれを教える者ではない。ただ、ここで時と運命を見守るだけだ。」



 私の心は砕ける。彼女が私のエリンでないなら、私の旅はまだ終わりではないのか? いや、終わりすらないのか? 疲れ果てた私は、もう立ち上がる力もない。彼女が私のエリンでないなら、この再会すら幻想だった。


 私は膝をついたまま、地面に額を押し付ける。「エリン…お前じゃないなら、私はどうすればいい? お前じゃないエリンに会うために、ここまで来たのに…。」 私の呟きは風に消え、彼女はただ黙って私を見つめる。



 長い旅の果てに、私はまたしてもエリンを失った。いや、初めからここに彼女はいなかったのだ。

 大魔法使いエリンは、私のエリンではない。私の魂は再び空虚に沈み、私はただその場に崩れ落ちる。エリン、私のエリン、お前はどこにいるんだ? お前でないエリンに会ってしまった私は、これからどこへ行けばいい?

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