第18話
私はかつてサー・ガレンと呼ばれた者だ。
だが、今は誰なのかもわからない。何度も生まれ変わり、姿を変え、職業を変え、時代さえも越えてエリンを探し続けてきた。騎士として、詩人として、鍛冶屋として、子供として、老人として――どんな人生であろうと、私の魂は彼女を求め続けた。
エリン、私の光、私の全て。彼女を見つけることが、私の存在意義だった。だが、今、その意味が崩れ落ちていく。
生まれ変わるたびに、エリンに会えない頻度が高くなっていった。最初は一時的なものだと思っていた。運命が私を試し、次の世界でまた彼女に会えると信じていた。だが、世界を渡るたび、彼女の気配は薄れ、彼女の笑顔は遠ざかった。
漁師として海を見つめても、商人として街を歩いても、賢者として書物を紐解いても、エリンの影すら見つけられない人生が増えた。私は必死に探した。彼女の名を呼び、彼女の痕跡を追い続けた。だが、どれだけ叫んでも、どれだけ手を伸ばしても、そこには虚無しかなかった。
そして、ある時、唐突にそれは起こった。プッツリと糸が切れるように、エリンとの絆が途絶えた。これまでどんな人生でも、かすかに感じられた彼女の存在が、完全に消え去ったのだ。
次の世界で生まれ変わっても、その次の世界でも、そのまた次の世界でも、エリンに会えない。彼女の声が聞こえない。彼女の温もりが感じられない。どれだけ探しても、彼女はどこにもいない。私はただ、果てしない空虚の中で立ち尽くすだけだ。
「エリン、どこにいるんだ?」
その問いが私の心を刺す。かつては彼女を探すことが私の生きる力だった。どんなに過酷な人生でも、彼女がどこかにいるという希望があれば、私は立ち上がれた。だが、今、その希望さえ失われた。生まれ変わるたび、私は彼女のいない世界に投げ込まれる。
漁師として網を投げても、戦士として剣を握っても、詩人として詩を詠んでも、そこにエリンは存在しない。私の魂は空っぽになり、かつて燃えていた炎は冷たい灰へと変わった。
絶望が私を飲み込む。何のために生まれ変わるのか? 何のために生き続けるのか? エリンがいないなら、この輪廻に意味はない。私は彼女を失った。いや、失ったという言葉さえ甘すぎる。彼女は完全に私の手からこぼれ落ち、どこか私が決して辿り着けない場所へと消えてしまったのだ。私は膝をつき、空を見上げて叫んだ。
「エリン! お前はどこにいるんだ! なぜ私を置いていくんだ!」
だが、答えはない。風が私の声を攫い、沈黙だけが残る。
何度も何度も生まれ直し、私は彼女を探し続けた。だが、もう限界だ。私の心は砕け、魂は疲れ果てた。エリンに会えない人生が続くなら、いっそこの輪廻が終わることを願うしかないのかもしれない。彼女が私の全てだった。彼女がいなければ、私はただの抜け殻だ。エリン、お前はどこへ行ったんだ。お前がいない世界で、私はどうやって生きればいい?
絶望の中で、私はただ彼女の名を呟く。「エリン…エリン…」 その声は虚しく響き、私をさらに深い闇へと沈めていく。
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