第11話 ▽「大そうじをする」▽

せーのっ

ラウリのかけ声とともに、ラースはラウリの力かげんに合わせてテーブルをそっと持ち上げた。トゥーリは玄関の外に立って、おーらい、おーらい、と二人をゆうどうしてテーブルを庭先に出す。そのあとイスを外に出して、今度はソファに着手する。


今日はトゥーリとラースのおうちを大そうじする日だ。とくに今日と決めていたわけではなかったのだが、ラウリがグラタンをおすそ分けしに来てくれたついでに、ということだった。


トゥーリとラースのおうちはものが多くない。広いお部屋に大きなテーブルがひとつと、そろいのイスが四きゃく、三人がけのソファに小さなローテーブルがひとつ、さいていげんのカップやお皿の入ったこぢんまりとした食器だなに、しんしつには大きなベッドがひとつとカウチがひとつ。そのていどだった。


トゥーリとラースはふだんからこまめにそうじをしていたので、おうちはきれいだったが、年に何度かこうやって、思いついたときに家具をぜんぶ出してすみずみまでピカピカにする大そうじをしていた。


三人は三角巾にマスク、エプロンにゴム手ぶくろという出たちで、本気のそうじモードに入っていた。家具を取り出したおうちはがらんと広くて、ソファや食器だなのあったところは白くほこりがつもっていた。


家中のまどや戸をあけて、トゥーリがほうきで床をはき、ラウリがちりとりでごみやほこりを集めた。ラースは天井のはりや、まどわくの上のところなど、高いところをぞうきんでふいた。


部屋のすみのほうをはいていると、ラースがさしものを作るときに出た木くずや、トゥーリがなくしてしまったと思っていたむらさき色のクレヨンなんかが見つかった。小さなクモもいて、あわててにげていった。


そうしてすみずみまでそうじをして、一息つくと、あけはなったまどから風がすーっととおってとてもきもちがよかった。お庭から、ローテーブルだけ中に入れて、そのまわりに座って、三人は温め直したラウリのグラタンをいっしょに食べた。


大そうじのときに食べるごはんはなんだかいつもとちがってとくべつなかんじがした。ぴかぴかになった床に座って、ここちよいつかれをかんじながら、温め直したごはんを食べると、なんだかラースとラウリともっと仲良くなれた気がした。


トゥーリとラウリがまんぷくになってくっつりしていると、ラースが玄関の柱のところで手まねきした。そこにはトゥーリが身長のしるしをつけているのだ。


トゥーリは三角巾をとってぱたぱたとしながら、柱に背をぴたっとつけた。ちょっとずるしてかかとを上げようとしたら、ラースに頭をぐっと押さえつけられた。そうしてえんぴつで柱にぴっとよこぼうを書くと、前に書いた印よりも2〜3センチも伸びていた。


トゥーリが、ぼく大きくなった?と聞いたけれど、ラウリは、トゥーリはまだまだちびっ子だよ、と言った。ちびっ子ということばの音のかんじがおもしろくって、トゥーリはけらけらと笑った。


夕方になるまえに外に出した家具をぞうきんでふいておうちの中にもどす。そうするとおうちは、やっとひとここちついたようにおちついて、トゥーリとラースのいつものいごこちのよいおうちになるのだ。トゥーリはこのおうちが大好きだった。そして大そうじをするたびに、いっそう好きになった。もう一人のかぞくみたいにだいじに思っていた。


日がくれて、ラウリはおじゃましましたと言って帰っていった。トゥーリとラースのおうちには、あたたかな明かりが灯る。広大な大地の真ん中にぽつんとよるべなく立っていながら、そこが、トゥーリとラースのよりどころなのだった。

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