第10話 ●「風邪っぴきの日」●

ラースがかぜをひいた。

ラースはいつもとちがって、ぐったりよこになったまま、おきてこない。走ったあとみたいに、顔が赤くて、汗をかいて、息がつらそう。


トゥーリにはかぜをひいた人のためになにをどうしたらいいかはわからないけど、何かしないといけないような気がして、ラースのまわりをうろうろとする。


そうしたらラースは、うつるからはなれていろ、と言う。それっきりラースは目をかたくつむって、苦しそうにそっぽを向いてしまった。


トゥーリのむねのおくがぎゅうっとなる。

トゥーリがかぜをひいたときは、ラースはいつもトゥーリをかかえて、あわててまちへと向かった。そしてシモさんとユリアさんのしんりょうじょへかけこんで、おくすりをだしてもらっていた。そのおくすりをのむと、トゥーリはたちまち元気になるのだった。


ラースの中に、かぜのげんいんの悪いやつがいて、ラースを苦しめてるんだ。そしてそいつは、くすりでたいじできないときは、そばにいるひとにうつるんだ。

だったら。


トゥーリはいいことを思いついて、ぎゅっとラースにだきついた。ラースはまた、はなれていろ、と言う。


やだ。かぜのやつが、ラースからぼくにうつってきたら、ラース苦しくなくなるでしょ。


そう言ったら、トゥーリはひょいとつまみあげられて家の外に出されてかぎを内がわからしめられた。


ラース!ラース!あけて!かぜなんかぼくがやっつけるから!


だけどラースはあけてくれない。

こまった。

しかしトゥーリはまたひらめいた。

こまったときは、ラウリをたよれと言われていたんだ!


それからすうじかんご、トゥーリがいっしょうけんめい走って、おくすりとごはんをもったラウリをつれてきたら、ラウリはなんだか小さなものでカチカチっとドアをあけて、ガミガミ言うラースにやくそうをせんじたものをのませてねむらせてしまった。


トゥーリがびっくりしてあんぐりと口をあけてラウリをみると、ラウリはおかしそうに笑って、もうだいじょうぶだよ、おきたらかぜはなおってるよ、と言った。


ラウリはまほうつかいなの!


トゥーリは目をキラキラさせてきいた。

ラウリはトゥーリの大好きなえがおでイタズラっぽくころころと笑った。


うん、そうさ。


つぎの日、ラースはげんきになって、三人でラウリの作ったごはんを食べた。

ラウリはまほうつかいなんだよ、とトゥーリが言うと、ラースはちょっとむすっとしたかおをして、ラウリはまたころころと笑った。

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