第8話  歩夢のおママ様、ちはるさんはすっごいママ

「あらあら、歩夢くん、今日は一段と可愛いわね」 


 リビングに入った瞬間、ピンクのエプロン姿の母さん・空野ちはるがそう言って笑う。 

 白いエプロン姿。ゆるふわの茶髪。 

 どう見ても二十代前半、いや、もはや、高校生だが大学生というほどに若々しいオーラが強すぎる。 

  だかしかし、俺の母親だ。


「どっちが歩夢くんのお嫁さんになるの? 楽しみだわぁ~」 

 

 うふふ、と笑う声がアニメにも出てきそうな母親キャラを連想させる。 

 この見た目が若すぎる人が俺の母親なのか。 

 未だに受け入れ難い事実だ。 

 いや、そこじゃない。 

 俺の母・ちはるは、たしかにすごいママだ。  

 見た目が若いとか、料理がうまいとか、そういうのじゃない。 

 

 母さんの人生は、ハードモードだった。

 愛する旦那と結婚してすぐ、1年経たずに事故で未亡人。 

 再婚しても1年経たずに事故で再び未亡人となる。 

 しかも、再婚した時に再婚相手の義理の父親と前妻との間で生まれた義理の妹と、俺の2人を一人で育てあげた。 

 働きづめの日々のはずなのに、笑顔を絶やしたことがない。 

 母さんは完璧に思える。

 唯一の欠点は不幸なことだ。


「愛する息子と娘のために、ママ明日も頑張るわね」 

 

 にこっと言うあたり、本気で天使か女神かって感じだ。 

 いつもダイレクトな愛情を注いでくれる。 

 これほどお母さんしてる人を他の家庭で見つけるのは無理難題なんじゃないかと個人的に思ってる。


「無理はしないでくれよ、母さん」 

 

 俺は母が倒れないか心配だ。

 俺のため、社員のためと人のためにいつも頑張りすぎているからだ。


「大丈夫よ~。愛の力でなんとでもなるわぁ」 

 

 俺の気持ちも知らないで、また、いつも通りにうふふと笑う。 この人、本当に母という存在の最上級かもしれない。 アニメを見ても俺の母親よりお母さんしているキャラを見たことがないぐらい自分の母親をすごいと思う。

シングルマザーで俺をここまで育ててくれたんだ。

さらに、女社長でもある。


「社員は私の家族よ、私の娘息子のようなもの。何があっても守るわ」 

 

 そんなことを本気で言える人。

 だから、母性のある人というとつい自分の母親を強く連想してしまう。

 あんなスーパーウーマンなかなかいないよ、アニメでも漫画でもいないからなぁと思うほどにそう思う。


「歩夢ちゃん、心配してくれてありがとね、大好きよ~。おやすみのちゅーはいる?」


「いらん!」 


 俺は即答した。


「いつまで子供扱いをするんなよ」


「あら、まだまだ可愛いのに」

 

 でも母さんは悪びれる様子もなく、「あら~、照れてる照れてる。やっぱり可愛いわぁ」と微笑んでいた。


 

 俺が2人の元に戻ると、美咲ちゃんは神妙な面持ちをしていた。

 めぐりも俯いて、唇を噛んでいた。


「めぐり先輩、戦いは中止です」 


 美咲が静かに切り出す。


「2人ともなんでいるんだ」


「そうだね」 


 めぐりが静かに頷く。


「私と協定を結びましょう。今は争っている場合ではありません」 


 美咲ちゃんが淡々とそう述べた。


「一体全体ど、どういうこと?」 


 俺は何が起こってるかよくわからなかった。

 そもそもこの2人は何かを争っていた。

 恋愛的な意味でぶつかってるようには見えなかったので、よくわからなかった。

 いや、恋愛なのか?

 どっちが俺のママに相応しいかだろ、本当に今でもよくわからない。


「ちはるさんには、私たちでは太刀打ちできません」 

 

 美咲ちゃんはやっぱり真顔だった。


「ちはるさん、すごいもんね、やっぱり歩夢くんのママだよ、すごいよ」 

 

 確かに、俺の母をすごいと思うことが多々ある。

 いや、最強かもしれない。 

 包容力、癒し、甘やかし、母性、全部のスペックが桁違いだ。

 欠点は若すぎて、俺の母親とは思えず、女子高生のコスプレして私高校行けるかしらとかいうことぐらいだろうか。

 本当に恥ずかしいからやめてほしいけど、やってもしまいそうな母ではある。


「お前ら、何の同盟結んでんだよ」


「先輩は自覚がないようですが、あなたはかなりひどいマザコンです」

 

 美咲が淡々と告げた。


「ひどいってなんだよ、俺はそこまでひどいマザコンじゃ」


「おやすみのちゅー断った後にめちゃくちゃ落ち込んでた顔、見てましたよ」

 

 美咲ちゃんが俺の会話に割り込み、即座にそう言った。


「……えっ、そうなの!?」

 

 まったく気づかなかった。


「無自覚な分、すっごくタチが悪いですね」

 

 美咲ちゃんがあきれた様子を見せる


「めぐり、俺がマザコンってことなのか?」


「うーん、ちはるさんのことがかなり好きなのはそうだよね」

 

 めぐりは困り顔でそう告げた。

  俺のマザコンはめぐりですら否定しにくい事実らしい。


「マザコンってどうやって克服すればいいんだ?」

 

 シングルマザーとして、俺を育ててくれたことに重荷を感じないわけがない。


「歩夢先輩は私にバブみを感じて、おぎゃるようになって


「お母さんへの思いを私と一緒に振り返っていくといいと思うよ」

 

 二人はそれぞれ違う意見を言ってきた。

 めぐりはいつも通りだ。

 相変わらず、美咲ちゃんは美咲ちゃんでぶれない。

 しょうがない。

 俺は自分の思いの丈を心の内から外へ出すことにしよう。


「あの社長でもある母さんに勝てる気がしないんだよ。すげぇ過保護でさ」

  

 2人ともじっと聞いてくれている。


「俺、情けないことに料理もできないし、掃除もへたくそなんだ、母さんが全部さらっとやっちゃって、どうせやってくれるからってだらしなくなってるんだ」

  

 俺はいったん深呼吸をする。

 美咲ちゃんは真剣な目で、めぐりはとろけそうなほんわか包み込むような目で俺の話を静かに聞いてくれていた。


「そんな俺があんまり好きじゃなくて、せめて勉強は頑張ってるんだけどな」


 俺の母親は素晴らしい。母親を女神様だと思っているのかと友達に言われたことがある。かなり過保護に育てられた。

 こんなことを母から言われたことがある。


「私の育て方はあってたのかしら?」


 俺は即座に言い返した。


「100点中、120点だよ」


 俺にとっての最も困難なことは母さんの欠点を見つけることだ。

 いわゆる俺はマザコンなのかもしれない。


「これはラスボスですね」


「私、勝てるイメージ湧かないよぉー」

 

 美咲ちゃんは真剣な様子でうーんと考え始めて、めぐりは困り顔を見せた。


「2人とも何と戦ってるんだ?」

 

 美咲ちゃんがジト目をしてくる。


「歩夢先輩は歩夢先輩で重症ですし」

 

 そんなに俺のマザコンはひどいのか。


「みんなー、ご飯できたわよぉ〜」


『はーい』

 

 俺たち3人は母さんの元へゆく。

 ご飯を食べて思う。

 もし地球最後の日に食べるとしたら、母さんの味噌汁がいい。

 うん。

 やっぱり俺は結構なマザコンかもしれないと思う俺だった。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


ここまでお読みいただきありがとうございます。


第6話のめぐりちゃん観点からのお話でした


もし、


ちはるさん素敵です


めぐりちゃん可愛い


美咲ちゃん可愛い


二人とも可愛い


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


次回は美咲ちゃん、めぐりちゃんの歩夢君への思いがさらに明らかになります。


公開日は5月6日6時頃です。


お楽しみに!



 

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