第7話  第1次バブみ対戦 sideめぐり

 私の恋の敵、美咲ちゃん。

 美咲ちゃんは学校で目立つこともない。

 むしろいるかもわからない。

 それぐらい影の薄い子だった。

 あまり容姿のこと言うのは良くないけど、とにかく地味で印象残らない子だった。


 でも、ある日、歩夢くんの前に急に現れた。

 とんでもなく可愛い子として。

 だから、怖いのだ。

 美咲ちゃんは歩夢くんの前ではすごく可愛いのだ。

 歩夢くんの彼女になるためならなんでもするというエネルギーがすごくて。

 

 私に持ってないものをたくさん持っている。

 例えば、胸の大きさ。

 内面的なところだと、信念の強さ。

 私と色々違いすぎて、勝てる自信は全くない。


「歩夢くんを甘やかすのは私だよっ!」


 空き教室で信じられないぐらい私の声が響いた。

 私にしては珍しく大きな声が出た。

 やっぱり美咲ちゃんが怖いのだ。


「めぐり先輩は、バブみを満たすことはできないですよねっ!」 


 私は「うぐっ」と声が漏れそうになったが、なんとか耐える。


「どうじょ、歩夢くん」 


  何も言い返せない。

 歩夢くん、助けて。

 すっごく泣きたい。


「めぐりさんには歩夢先輩をあげませんよ、ここだけは譲りません」 


 美咲ちゃんはキリッと私を睨みつけてくる。


「ママって、子供のために戦うよね? 私、美咲ちゃんには絶対負けないよ」 

 

 私なりに言い返してみた。

 美咲ちゃんみたいにしっかりはしていないけど。


「望むところです、めぐり先輩、では」 


 美咲ちゃんは笑顔だった。

 

 スポーツマンシップに則って、相手と戦う時なような綺麗な笑顔だった。


「歩夢先輩はこれをかぶってください」


 美咲ちゃんが歩夢くんに差し出したのは、小さなニット帽だった。

 ふわふわで、くまの耳がついている。

 赤ちゃん用のもの。


「これ、俺が?」


「もちろんです」

 

 美咲ちゃんは歩夢くんに訊かれたことに対して、しっくり答える。

 歩夢くんは抵抗する余地があるわけでもなく、言われるがまま、それが頭に乗せられた。


『可愛い!』 

 

 私と美咲ちゃんの声がはもった。 

 なに胸が高鳴るこの感じ。

 これが母性なのかなぁ。


「ごめん、恥ずかしすぎるから取るわ」

 

 歩夢くんはあっさりと赤ちゃん用のニット帽を外しちゃう。

 横で美咲ちゃんは「あっー」と心の声が漏れていた。

 私は「似合ってたのに」と愚痴をこぼしてしまう。

 でも、歩夢くんを無理やり赤ちゃんにするのはよくない。

 可愛いけど。歩夢くんは、深くため息をついた。


「この戦いの終わりがなんなのかが全く見えないんだけど?」

 

 歩夢くんは少し疲れた様子で訪ねてきた。


「私たちが満足するまでですよ」


「美咲ちゃん、私はそんなこと考えてないよっ!」

 

 私はさらっと美咲ちゃんに巻き込まれた。


「どうしてもバブみのそこまでこだわるんだ?」

  

 歩夢くんはとても不思議そうにする。


「それは………」

  

 すると、美咲ちゃんの顔はみるみる赤くなっていった。

 どうしたんだろ?


「先輩のエッチ!」

  

 美咲ちゃんは突然、叫んだ。


「えっ? 他の」

 

 歩夢くんは目を白黒させた。

 困ってる様子だ。

 美咲ちゃんだって女の子だ、バブみとかいうけど歩夢くんが好きだからやってるみたいだし、やましい気持ちぐらいあるだろう。

 乙女の勘で分かる。

 歩夢くんのためにも美咲ちゃんのためにも話題は切り替えた方がいいだろう。


「私はやっぱりバブみとかよくわからないけど、歩夢くんが安心して戻ってくる居心地のいい場所を作りたいなあ」

 

 バブみは年下に甘えること。

 おぎゃるは年下に甘えて、赤ちゃん戻りをすること。

 何度と聞いたから覚えてしまった。

 いずれも私がやることができない。

 

 だからこそ本質を私は考える。

 母性とは何か。

 歩夢くんのママって、どういう存在なんだろう。

 母性って、よしよしと甘やかすこと?危ない目に遭わないように見守ること? それとも、ただ一緒にいて抱きしめてあげること?

 

 私なりに、いっぱい考えてみた。

 身も心も安全な場所を作ること。

 私にとっての理想のママについて思う現時点の答えだ。

 これがあっているか、歩夢くんの様子を見て答え合わせをこれからしていく予定だ。


「歩夢くんのママになるのは、歩夢くんの彼女になるより大変なんだから目指すんだから」


「それってどういう意味?」


「ん?」

 

 テンションが上がって変なことを言ってしまった。

 実際、私はまだ歩夢くんの彼女でもない。


「いや、なんでもない」

 

 歩夢くんは恥ずかしそうだった。

 私はそんな可愛い歩夢くんにキュンとしてしまった。

 子宮でも疼いてしまったのだろうか。

 私は自分に母性が芽生えつつあるのかなぁと思えて嬉しくなった。

 この気持ちが歩夢くんのママになるって意味するなら、私はきっと、ちゃんと自分を好きになれる気がする。

 なんだか少しだけ自分が成長した気がして、自分で自分を褒めたくなるのであった。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


ここまでお読みいただきありがとうございます。


第6話のめぐりちゃん観点からのお話でした


もし、


めぐりちゃん可愛すぎるし、いい子だなぁ


この話よかったです


めぐりちゃん。やっぱりけなげだなぁ


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


次回は歩夢君のママさんが登場します!


公開日は5月5日6時頃です。


お楽しみに!

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