流星
夜空を見ていると、とほうもない感覚になって、時間というものについて、考えてしまいます。今、私が見ているのは、もしかしたら何億年も前のものかもしれない。今、私が見ている光は。
そんなことを考えて、頭が、おかしくなってしまいそうにクラッとしながら、私は人生というものについて考えていました。私は、橘。橘美咲。友達からはミサと呼ばれています。
ともだち、二人しかいないんですけど、大事な友達です。私といっしょに、笑ったり歌ったり。人として、対等でいてくれるんです。そして、心の中にもう一人、友達がいます。
「梨花。あなたは空を飛ぶときは、夜空をときたま流れる流星のようでしょうか。ほこりだかく、ほまれだかく、汝、星のごとく。私は、私の課題を、私の魔法で解決したい。梨花。あなたがそうしたように。」
私の魔法って、なんだろうか。ミサは少し、みけんにゆびをあてて考えます。(私の魔法って、なんだろうか。)星は、まるで奇跡のようにまたたいていたのです。
あ、そうか! ミサは考えのすえに少し、ひらめきます。これが、哲学っていうんだ。星の空の下で、自らの魔法について考える。それを私の哲学と言ってもさしつかえないんだ。
梨花。私は私の魔法をまだ知らない。だけど、私は考えるということができる。私は、感覚することができる。物語の効用について、天之川銀河の広さについて、ついに届かない時間について。そして、
私自身を救う、私自身の力について。ねえ、梨花、そうでしょう? 私は、私としてほこり高く、生きていける。(ねえ、梨花、そうでしょう? 私は、この人生の主人公になれる。)
生きるということ、隠された悪を注意深くこばむこと。ミサはそんな詩句を思い出しながら、私の人生、幸とともにある。そう確信してほほえみました。
「私は、美しい生存。私は、美しい生命。私は、美しい知性。私は、……。」ミサは、少しづつ成長していく自身の生を、少し、受け入れることができそうだと、思いました。
私は、美しい生存。私は、この空の下で、せいいっぱいに生きていける。自らの魔法について哲学しながら。そして今、この星だらけの空の中に、一本の流星が、魔法のように闇を駆ける。
九連目に、谷川俊太郎『生きる』より引用があります。
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