原作者 白海香織

私が息をすると、日々は驚くほど鮮やかに彩られた。まるで、洗いざらしの洗濯物のように。生きているって不思議、生きているって不思議だ。私は、今、悲しいことなどひとつも、考えたくはない。


朝が来るまえに、答えよ。生存はそれでもなお美しいかと。私は白海香織。きらきら町の高校二年生だ。私は、私の『友』とともに、ついぞ見ない王国を探していた。(物語の効能は、現実と空想の橋渡しを行うこと。空想の人物が、現実に顕れないということは嘘だ。そして、現実の事物は、確実に空想に反映される。)


踊ろうよ! 私の友だち! そう言って私はなお物語をたくましくする。空想の夢しか見れない私が、現実の魔物に打ち勝つのはいつ? そう言って私は授業中であっても、盾のように構えた教科書の裏で物語を展開する。私は、ここ最近、ひとりの魔法少女について、思いを巡らしている。


魔法少女の名前は、梨花。梨の花の似合う、白と黄色をあしらったドレスに身を包んだ魔法使いの少女。彼女は、この町を護るために立ち上がった! ……という空想を私は欠かしはしない。彼女は、勝利するために生まれてきた、棘のある敬語でしゃべる誇りある戦士だ。


物語の効能は、現実と空想の橋渡しを行うこと。魔法少女梨花が、現実に現れないということは嘘だ。そして、私は、梨花とおはなしすることができる。私は、勇気ある人間を友とすることに、おおいなる喜びを感じています。


私が息をすると、日々は驚くほど鮮やかに彩られた。まるで、洗いざらしの洗濯物のように。生きているって不思議、生きているって不思議ね! 私は、今、悲しいことなどひとつも、考えたくはない。私は考えていたい、梨花について、きらきら町について、私がこれから彼女たちとどんな冒険を繰り広げるのかについて。そして、彼女をただしくこの世に降り立たせる降霊術について。


私は白海香織。まだ名もない小説書き。私は、あたらしい倫理を探している。私が、生きていることは嬉しいと、まるで子供のように再び発することが出来るようになるまで、なんどでも、なんどでも。きらきら町の沃野にアイロンをかけるみたいに、執拗に。彼女たちについての冒険譚を、書き上げるために。なんどでも、空想の発動機を駆動させる。

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