第11話「大蛇 其のニ」

すでに日が沈み、真夜中と言っていい時間帯になった。森の中は何も見えない為、ランプを手に昇龍と珠羅の二人は葉狗を探した。麓の森に着いたはいいものの、広すぎて探してもキリがない。


「うーん…どこに行っちゃったんだろ…」


「このまま探しても一生見つからんし、僕の術で探そか。」


「そうだね…」


狐火の術は転送。人間を惑わせる為の術だが、使い方を変えればとても便利な術である。この術を使えば、移動時間を省いて葉狗を探せそうだ。


「ほな、行くで〜」


珠羅は昇龍に近寄ると、手を合わせ術式を展開した。それとともに見覚えのある眩しい光が昇龍達を包み込んだ。


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何回か転送したがなかなか見つからず、珠羅は術を連続で使っていたので、見るからにへとへとだ。昇龍も術の眩しい光で目がチカチカしていた。


「これ小屋で待っといた方がよかったんちゃうかー…」


「先帰ってる可能性もあるしね…珠羅くん、疲れているだろうけど小屋の方見てきてもらえる?僕はこのまま探しているから…」


「えぇ?!もう妖力残ってへんのやけど!!」


「力を振り絞って…頑張って…」


「無理やって!!!」


全てに妖怪にはそれぞれ特有の術がある。狐火は転送、天邪鬼は妖気を感じ取って予言するなど、全てが違うのだ。だが、その術を使うには妖力という、妖怪にしか持っていない力が必要である。妖力は多ければ多いほど強く、鬼なんかはたくさんの妖力を持っている。所謂、ファンタジーの魔力のようなものだ。


「…ってあれ?あんな所に池なんてあるんや。」


「え…?」


昇龍がふと顔を上げると、見るからに大きい池があった。水は澄んでおらず、そこが全然見えない。底なし沼…とでも言うのだろうか。


「うへ〜…底なし沼かぁ…昔一回落ちて死にかけた事あるで。」


「えぇ?!よく助かったね!」


「暴れるともっと沈むってどっかで聞いたことあったから、冷静になって術を使ったんよ。何とか泥と共に転送できたわ。」


「妖怪だから助かったんだね…やっぱり妖怪って凄いよ!!」


「ちゃうわ!!僕の術が凄いから助かったの!!」


暫く2人底なし沼の前に座って、沼のトークを話していると、突然沼の中からブクブクと不気味な音がした。


「うわっ?!何や?!」


「ブクブクいってるよ?!」


次の瞬間、修羅の足が掴まれた。沼から出てきた手ががっちりと珠羅の足を掴んでいた。そしてそのままとてつもない強さで珠羅を沼へと引っ張った。


「ぎゃああああああ?!何やこれ?!昇龍助けてぇぇ!!!」


「!!珠羅くん!!」


沼に引き摺り込まれる瞬間、咄嗟に昇龍は珠羅の手を掴んだ。だが手の方が力が強く、少しずつ沼へと進んでいる。


「うわあああああもう終わりやああ!!転送するにしても妖力残ってへんし…」


「ぐぐぐ…がん…ばってぇ…!!」


「そうや!あんさん陰陽師やろ?!なんかいい感じの術ないん?!」


「いい感じの…あ!一か八か…!!」

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