第9話「狐火 其の五」
退治しないのはいいが、そのままにすればまた退治依頼が急増し、神社に苦情が殺到してしまう。そんな事があったら神社の鬼である昇龍の母が黙ってはいないのだ。考えるだけで鳥肌が立つ。だから昇龍は退治をせず、全て話し合いで解決している。妖怪はただ悪さをしているのではなく、何か理由があるものだと昇龍は思っているので、妖怪のお悩み相談役をしているようなものだ。
「妖怪と話していると、本当に楽しいんだ。人間よりも、ずっと。」
昇龍が過去に会った妖怪を思い出して笑っていると、狐火が気まずそうに昇龍に謝った。
「なんやえらい誤解をしてたようやな…酷いことしてすまん。陰陽師だからって決めつけるのも良くなかったわ…」
「そっ…そんな!謝る事じゃないよ!陰陽師に恨みを持つなんて当たり前のことだし!」
「…ふふっ…君の言う通り、人を遭難させるのはもうやめたる。でもこれで暇になったわけやから、その分は責任取ってな?」
元々狐火は暇つぶしに人間で遊んでいたので、何もやる事が無くなる。次の遊びは昇龍が決めろ、と言う事だ。
「!勿論!!それは考えるから任せて!」
「あぁ、それと…此処に居座るのも人間に見つかったら大変やしやめよ思ってんねん。どっか住むとこあるか?」
「住むところ…?」
昇龍が狐火に最適な場所はあるかと考えていた時、その会話を聞いていた天邪鬼がぱんっと手を叩いて提案した。
「ぼくと一緒で良ければ、小屋はどうでしょうか!あそこは景色も良いし、街全体も見回せますよ!お兄さんもどうですか?」
「あぁ!その手があったか!!狐火さんどう?」
「そうやな…1人より2人の方が楽しいか…天邪鬼君が遊び相手になってくれるんならええで。」
「勿論なりますよ!お兄さんは神社の仕事があるし、毎日小屋に来られるわけじゃないので…少し寂しかったんです!」
「ほな、お願いしよか!宜しく〜」
「じゃあ早速小屋に向かおうか!」
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「到着!!」
「うわぁ…結構綺麗やんなぁ…」
狐火も山ならではの綺麗な景色が見れて満足したようだ。狐火がいた山は標高が低く、これと言って景色は良くなかった。
「そういや、陰陽師さんと天邪鬼君って名前あるん?2人もずっとお兄さんとか天邪鬼くんとしか呼んでなかったやんか。これから一緒に居るんやから名前ぐらい知っときたいんやけど。」
狐火が名前を問うと、昇龍と天邪鬼はそういえば名前知らなかったなと思い返した。確かにこの先一緒に居るのなら名前は知っておいた方がいいだろう。
「じゃあ改めまして…僕は暁月昇龍。昇龍って呼んでね!」
はく
「ぼくは天邪鬼の葉狗です。気軽に呼んでください。」
しゅら
「僕は狐火の珠羅や。よろしゅう。」
こうして昇龍の仲間はまた1人増えたのであった。
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