第8話「狐火 其の四」

「やっと返事してくれましたね!呼び続けた甲斐がありました!」


「だね!話も聞いてくれるそうだし!」


あれからずっと叫び続けていた昇龍と天邪鬼は少し疲労していたが、狐火の返事を聞いてから一気に元気を取り戻した。後は自分達に敵意が無いことをわかってもらえるようにするだけだ。


「いやぁ〜…やっぱり狐火はいいよね…小声で話していても聞こえるぐらい耳がいいんだよ!後はね、」


「おい。何僕の事話して…っていうか何で狐火のこと知ってんねん…」


頭上から狐火がひゅっと降ってきた。どうやら狐の姿にもなれるようだ。綺麗な白い毛並みに真紅の瞳で此方をじっと見つめている。


「!狐火さん!来てくれたんだね!」


「君らうっさいねん、狐火の気持ちにもなれや。」


狐火は眉間に皺を寄せているように見える。見るからに機嫌が悪そうだ。


「こうでもしないと出てきてくれないと思って…」


「…はぁ…で?話って何や?悪いけど、退治しようもんならこっちも容赦はせえへんよ?」


「違うよ!僕は、その…普通の陰陽師じゃなくて…妖怪が大好きな陰陽師なんだ。」


「…は?」


昇龍の突然の告白に狐火は困惑を隠しきれず、ポカーンとでもいいそうな顔をしている。


「狐火の事を知っていたのも、僕が妖怪辞典を持っているからで…当然、天邪鬼くんのことも知っているよ!」


「ぼくのことも?」


「うん!天邪鬼は相手の妖気を読んで行動を察知するんだよね…ってあれ?なら天邪鬼くんは優子さんの行動を察知できるのに…どうして?」


妖気とは何か悪いことが起きそうな怪しい気配のことである。天邪鬼はイヤリングを優子に盗まれる事を予言できたはずなのに、どうして盗まれてしまったのかと昇龍は疑問に思った。すると天邪鬼は少し笑って言った。


「確かに、あの人間の行動は直ぐに察知できました。でも…ぼくにはやっぱり人間を傷つける勇気はありません。何故か自分の体も逃げようとはしませんでした。きっと悪いことの後に起こるいいことも、予言していたのかもしれませんね。実際、陰陽師のお兄さんが助けてくれましたしね!」


「天邪鬼くん…!」


「…あー…まぁ、君が妖怪に詳しいことはわかったわ…」


話に入りにくそうな狐火は何とか会話に入り、昇龍に質問した。


「妖怪を退治するつもりはないんなら、今まで殺した妖怪は何人や?陰陽師なら1人2人は殺してんねやろ?」


狐火は少し警戒しながら何人殺したか質問した。すると、昇龍はあっさりと答えた。


「0だよ?」


「は??」


ますます意味がわからない。何のための陰陽師なんだ?というか何で陰陽師なんてやっているんだ?と狐火は混乱した。


「た…退治依頼とかたくさん来たやろ?退治対象の妖怪はどうしたん?」


「え?一緒に退治依頼した人間の愚痴を言い合って逃しただけだよ?他の陰陽師に殺されないようにね!」


「…まじで…?」


「逃したのは驚きです…」


狐火は勿論、天邪鬼までもが妖怪を退治したことがないという事実に驚いた。


「妖怪は人間の良いようになっては駄目だ。妖怪にも人生があるからね。退治依頼されると妖怪に自然に会いに行けるから陰陽師を続けてるんだよ!」














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