第7話「狐火 其の三」
さて、山奥に転送されたがどうしようか。どうせ歩き回っても出れないのだから、下手に歩き回らない方がいいだろう。だがこのままだと餓死する運命しか見えない。休める場所と食べ物を探そうと昇龍は天邪鬼を連れて周りを歩いてみた。
「どうやって狐火さんを説得させようかな…まともに話も聞いてくれなさそうだし…やっぱ陰陽師だからそんな反応になるよなぁ…」
「大声で呼んでみましょうか?ずっと呼び続ければいつかは応えてくれると思いますよ!」
「いいね!やってみよ!」
山は声が響きやすい。大声で叫び続けたら狐火も観念して出てくるだろう…というのが天邪鬼の考えだ。昇龍達は大きく息を吸い、そしてー
「「狐火さぁぁあああああああん!!!!!」」
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なんということだ。食べ物を探し始めてしまった。普通の人間ならば山中をずっと走り回って死に物狂いで出口を探すというのに。
「おもんないなぁ…ま、死んでくれればそれでええんやけど…」
陰陽師をここで殺せば、この地域に住む妖怪の命を救うも同然だ。他の場所からも妖怪が集まってくるだろう。妖怪は昔のようにそこら中にいるようなものだったが、陰陽師の数が増えたせいで数も激減してしまった。そのため多くの妖怪は人間を、陰陽師を憎んでいるのだ。
「最近はもう同胞を見かけんしなぁ…狐火も少なくなったもんやで…」
「「狐火さぁぁあああああああん!!!!!」」
「うおっ?!何や?!」
突然叫び声がした。狐火は耳がいいので遠くの音まで聞こえるが、声の響く山で叫ばれると凄くうるさい。
「こいつらほんまに馬鹿なん…?」
呼べば出てくると思っているのか。絶対呼ばれても出てやらんと、狐火は心に誓った。餓死させるためにわざわざ山奥まで転送させたのだ。自分がもうこいつらの前に出ることはない。
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「「狐火さぁあああん!!!」」
…。いつまで呼び続けるつもりだろう。かれこれ20分はずっと叫んでいるが…そろそろ耳障りになってきた。さすがの狐火も苛ついて癖である爪を噛んでいる。
「「狐火さあああああん?」」
「うるっっっっさいねんお前らぁ!!!!」
ふつふつとわいていた怒りが爆発し、昇龍達に聞こえるよう狐火はわざと大きな声で怒鳴った。これだから諦めの悪い奴は嫌いなんだ。
「「お話しませんかぁあああああ!!!」」
「わかった、わかったから!その声をやめろ!!めっちゃうるさいねん!!話しゃいいんだろ話しゃ!!」
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