第4話「天邪鬼 其の四」

「は…?何を言っているの?天邪鬼が私だとでも言いたいんですか?」


「…イヤリング。あの子から盗んだよね?」


「なっ…?!?!」


どうしてこの男はイヤリングの事を知っているの?!私の被害者の演技は完璧だったはず…それなのに…


「…その反応は…図星?」


昇龍は冷ややかな目で優子を見下した。その目には怒りの色が浮かび、まるで逃がさないとでも言っているようだ。


「返してあげてくれないかな?そのイヤリングはあの子の大切な物だ。やっと見つけ出した物だし、あの子なら生涯大切にしていく物だと思う。貴女がどうやって盗んだのかは知らないけど、ちゃんと返すべきだ。」


「っ盗まれた方が悪いんじゃない!貴方陰陽師なんでしょ?!妖怪の味方なんてしないでさっさと殺してよ!!」


「陰陽、師…?」


「!!!」


優子が振り返ると、大声を聞いて様子を見に来た天邪鬼が戸惑ったように立っていた。戸惑うのは当たり前だ。妖怪にとって陰陽師は殺し屋みたいなもの。恐怖でしかない存在なのだ。…では何故その陰陽師がイヤリングを取り返そうとしてくれているのだろうか、天邪鬼の疑問は深まるばかりだった。


「ごめんね天邪鬼くん!今取り返すから少し待っててね!!」


「…!陰陽師さん…」


昇龍が天邪鬼に向ける表情は優しい。ペカーっとでも言うような満面の笑みが輝かしい。それを見た女はさらに怒り、昇龍を問い詰めた。


「どうして私では無く妖怪を信じるの?!人間に悪さをする妖怪を殺すのが普通の陰陽師でしょう?!」


「生憎、僕は普通の陰陽師じゃない。妖怪が人間より大好きな異常な陰陽師だ!イヤリングをこの子に返さなければ貴女をこの呪術で呪う!!」


昇龍が脅すと、呪術の恐ろしさをしっている優子は喉から出たひっと言う声を出ししゃがみ込んだ。そして半泣きになりながらもイヤリングを返し昇龍に懇願した。


「お願い!!返すから命だけはっ…!!!」


「…もう二度と馬鹿な真似はするな。学校で道徳でも学んでこいっ!!!」


「は…はいぃ!!!」


昇龍に怒鳴られ逃げるように優子は走り去っていった。無事にイヤリングを取り返し安堵していると天邪鬼が嬉しそうに話しかけてきた。


「有難うございます陰陽師さんっ!!貴方は陰陽師だったのに本気で返そうと怒ってくれて…本当に嬉しかったです!感謝してもしきれません!!」


「そんな大袈裟だなぁっ!あ、そうだ。イヤリングつけてあげるよ!」


「えっいいんですか!」


「うん!じゃあじっとしててね。」


昇龍は天邪鬼の耳にイヤリングをつけてやった。天邪鬼の喜ぶ姿に思わず笑みをこぼした。やっぱり妖怪って好きだなぁと改めて思う昇龍だった。





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