第2話「天邪鬼 其のニ」

天邪鬼の退治依頼を受け、昇龍は依頼者である女の家へと向かった。もう既に日は沈んでおり、街灯もない村の道は薄暗く見えにくくなっている。なんだかんだ言って天邪鬼と会うのは初めてなので、心臓がバクバクいっている。…あくまでも、早く会いたいという感情である。


「…此処かな…お邪魔します!!」


女の家に入ると家具は必要以上に揃っていて、思った以上に綺麗だった。


ーあれ…?貧乏だって言ってなかったかな…?食べるものにも困っているのに家具がこんなにも揃っているなんて…あの人、家具マニアだったんだなぁ…ー


あまりにも予想外すぎた為疑問を持ったが、人それぞれかと気に留めることはなかった。早速昇龍はいつ天邪鬼が来てもいいように玄関でスタンバイした。


「いつ来るかな…会ったら何話そうかな…友達になれるかな…」


…と理想を膨らませていたその時…


ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


「!!??」


物が激しく崩れ落ちる音がした。


「音がした方向は…外か…もしかしたら天邪鬼かも知れないし…行ってみるか!」


昇龍は玄関から飛び出し、音のした方向へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いたた…あ、血が出ちゃった…」


昇龍が声のした方を見ると、小さな子供がうずくまって痛そうにしていた。どうやら崩れた物の下敷きになって、足に擦り傷が出来てしまったようだ。


「だっ…大丈夫?!って怪我してるじゃん!!早く手当て…を…」


駆け寄ると暗くて見えなかった子供の姿があらわになった。ツノが2本、雀斑のついた可愛らしい顔、癖の無い栗色の髪、珍しい黄色の瞳。これは…


「あああああああああ天邪鬼?!?!ほほほほほ本物?!」


「にににににに人間?!」


突然現れた人間に驚いたのか腰をぬかしてしまっている。一方で昇龍も天邪鬼に会えた興奮から自我を失っている。


「天邪鬼だよね?!わああああ初めまして!!握手しようよ!!」


「わああ来ないでええええ!!…痛っ…」


昇龍から逃れようと暴れて足の傷が痛んだようだ。結構傷も大きいらしく、辛そうにしている。その姿を見た昇龍は自我を取り戻した。


「あっ…ご、ごめんね!僕ったら興奮しすぎて…」


「いっ…いえ……大丈夫…です…」


「怪我、手当してあげるからおいで。大丈夫…何にもしないよ。」


最初は遠慮がちだったが、段々危険はないと判断したのか、暫くすると警戒を解き大人しく手当てを受けた。


「あの…ありがとうございます。助かりました。」


「いや、いいんだよ!ところで、此処らへんってよく来るの?」


「…はい。毎晩来ます。ぼくはやらなければならない事があるので…」


「それって…」


「ぼくは母の形見を…取り返しに来ているのです。」

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