Brand-new life

そりゃ災難や

第9話

―――――――……




窓から差し込む陽の光に目が覚めた。見慣れない色のカーテンだとか、まだ開ききっていない目を擦りながらぼんやり思いつつ身体を起こす。


…お腹空いた。あー…昨日の夜、何も食べてないや。そーいやなんでそんな早く寝たんだっけ…




ガチャ。





「なんだ起きてんの?ならさっさと来いよ」





……………ああ゛ー!!!




ノックすらなく無遠慮に開かれたドアから出て来たその無駄に整った顔を見て、寝ていた頭が完全に覚醒した。




…そうだった、昨日はあの変態に大変な目に遭わされたんだった。



『勝手に開けんなバカっ』



はいはいとドアの向こうに消えて行った城咲を確認して、時計も確認する。それほどゆっくりしている時間はないらしいので、あたふたと新しい制服に身を包み、寝癖を適当に直して部屋を出た。



…あ、なんか好い匂い。



丁度その時、料理を乗せた皿を両手に持った城咲がキッチンから出て来た。



「おら、冷めねぇうちに食え」


『…お前が作ったのか?』


「俺以外に誰がいんだよ」



そりゃ尤もだ。


けれどもそう訊きたくなるのも当然だろう。テーブルの上には、湯気の立ち上る味噌汁に、綺麗に巻かれた出汁巻き卵、つやつやの白いご飯に香ばしい焼き鮭。といった、完璧なるザ☆日本の朝ご飯が並んでいる。



…こんなのをこの変態が作ったなんてギャップどころの騒ぎじゃないわ。



いただきます、と手を合わせ、恐る恐る味噌汁に口をつける。ほら、見た目が良いだけってのもあるからね、もしかしたらとんでもなく…



『………美味しっ!!』



…うまいじゃねぇかあああああああ!!!!



「当然」



何だ!?めっちゃ美味しいじゃん!!このお味噌汁、絶対出汁から取ってる味だし、ご飯の炊き具合も絶妙!それに何なのこの出汁巻き卵、ほんと最高。



「出汁巻きも絶品だろ?有り難く食いな」



物凄い勢いで箸を進める俺を、城咲は満足そうに眺める。



『ほんっとおいし…あ』



…やべ、餌付けされかけてる。



褒めるのもそこそこにしといてご馳走様、と箸を置き、ちゃちゃっと食器を洗ってから、城咲の後について学校に向かった。








全寮制の一番良い所は、学校が近くにあることだと思う。満員電車やバスの乗り換えの苦労もなく、こんなに爽やかな登校時間を過ごせるなんて。そんな落ち着いた心地でいたが、校舎が近付くにつれてやはり緊張してくる。新しい学校、新しいクラス、新しい友達…人見知りはしない方とはいっても、不安がないといったら全くの嘘になる。



…仲良くなれると良いなぁ。




「何してんだよ、入るぞ?」





………忘れてた。



あっという間に教室の前まで辿り着き、その声で漸く思い至った。コイツと同じ部屋ってことは寮で同じ階ってことで…イコール同じクラスじゃん。






…仲良クナレルト良イナァ(棒読み)





ガラ、と城咲が戸を開け、その後に続く。











…………え。





それまでがやがやと騒がしかった教室が、瞬間、水を打ったように静まった。





…俺、なんかしたかな…?










「うっわ誰???めっちゃ可愛いコいるんだけど!!」


「雅、どっから連れ込んだんだよ」


「ねーねー名前何て言うのー?」




一気に騒がしさを取り戻した教室のあちこちから、色んな声が飛んでくる。




…ちょ!ま!待って!俺は聖徳太子じゃないんです!!そんな一気に言われても聞き取れないんです!ええと、とにかく!



『…ぁああ天宮る、瑠綺ですっ』



なんとかそれだけ言ったが、まわりに人が集まって来て揉みくちゃになりつつあったので、城咲を盾にしてその広い背に隠れた。




「ったく…怯えてんだろうが」




おら、散れ散れ、と城咲が言ってくれたので、この時ばかりは感謝した。皆がばらばらと離れて行き、漸く息が出来た。来いよ、と呼ばれてついて行き、窓際一番後ろの席に座った城咲の前の席を勧められた。



『え、この席空いてんの?』


「さあ」


『さあ、じゃねえよ、人様の席に座っちゃダメでしょ』


「そこ、空いてんでー」



…お?



その時、城咲とは明らかに違う口調の声が答えた。

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