第14話 トランプ大統領と科学者
トランプ大統領は、地球温暖化は今世紀最大の詐欺事件だ、或いは、最大のフェイクニュースとも表現して、アメリカの温暖化対策に急ブレーキをかけている。
一方、世界中の160人の科学者が作成した報告書では、一連の壊滅的かつ不可逆的なものになり得る気候の転換点、すなわち、ティッピングポイント(tipping point)の最初の段階、世界中のサンゴ礁の死滅が近づきつつあることが判明した。
果たして、偉大な大統領トランプの盲信とデーターを分析した科学者とどちらが正しいのだろうか。アメリカですでに深刻な熱波、洪水、干ばつ、山火事が頻発しているのに、トランプ大統領は一連の災害を前大統領のせいにして、なおかつ、気象を観測する政府職員の数を減らして目の前に起こる災害に対して目をつぶろうとしている。
頭の中は、財政赤字削減しかないのだから中間選挙の頃まで突っ走るのはしかたがない。その付けは次期大統領が負うことになる。アメリカが財政破綻したら、世界はますます混乱する。いや、混沌の世界が訪れるのだからMAGAをある程度実行しなければならないが副作用が大きすぎるのが欠点だ。
トランプ大統領は、プーチン大統領を持ち上げたり狂っていると非難したり、態度をころころ変えるが、意思疎通は出来ているのかもしれない。ロシアに簡単に勝ってもらっては困るし、負けてもらっても困る。戦争を非難しているが、続いた方がアメリカは得になる。ウクライナ資源の半分の利権は手にした。NATOには、防衛費の増大を約束させた。今までただ同然にウクライナへ提供していた武器をNATOに買ってもらうことになるのだ。武器を売る方が、自動車を売るよりずっと儲かるのだ。アメリカの財政赤字は戦争が続けば、次第に回復していくだろう。
ウクライナは、ロシアの戦争継続を鈍化させるため石油関連施設を攻撃している。それは、化石燃料を燃焼し気温を上昇させているともいえる。
サンゴ礁が死滅すれば、さらに大きな影響が出るであろう。
気候変動が、アマゾン熱帯雨林から極地の氷床に至るまで、重大な影響を及ぼし始めたら地球のバランスは崩れ、壊滅的な影響が地球全体に広がるだろう。
「私たちは複数の地球システムの転換点に急速に近づいており、それが世界を変化させ、人間と自然にとって壊滅的な結果をもたらす可能性がある」と、英エクセター大学グローバルシステム研究所のティム・レントン教授は述べた。
報告書によれば、熱帯のサンゴが最初の転換点となる。
2023年以降、海水の温度が上昇したため、世界のサンゴ礁は史上最悪の大量白化現象に見舞われた。影響を受けていないサンゴ礁は残り2割に過ぎない。
サンゴ礁は海洋生物にとって不可欠な生息地であり、食糧安全保障に欠かせない存在だ。沿岸地域を嵐から守っている。報告書によると地球は、さらにいくつかの転換点を迎える瀬戸際にあり、産業革命以前の水準から1.5度以内に温暖化を抑制するという世界的に合意された目標が未達に終わるのは、ほぼ確実だと科学者は思っている。
あと、0.5℃の上昇でヨーロッパ諸国は壊滅的になると言われている。
それは、大西洋の重要な海流ネットワークである「大西洋子午面循環(AMOC)」が崩壊する可能性が海水温の上昇により予想されているからだ。これはヨーロッパ諸国に深刻な寒冷化をもたらし、別の地域を温暖化させる。モンスーンの季節を乱し、海水準を上昇させるなど、世界に壊滅的な影響を及ぼすとみられる。
その崩壊は、今地球上で生きている人々の生涯のうちに起こる危険性があると科学者は、警鐘を鳴らしている。
一番の問題は、科学者が想定しているシナリオを為政者が全く理解していないということだ。
11月10日からブラジルで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が始まるが、集まった各国がどのような方向性を示せるか重要になってくる。今後10年間のCO2の排出量削減目標を設定するとみられているが、紛糾することだろう。特にヨーロッパ諸国は、もう眉毛に火がついているのだ。
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