第12話 日本の沸騰化

 例年とは違う今年(2025)の高い気温は、次のように説明されている。 


 1.高気圧の重なり。

 太平洋高気圧とチベット高気圧が重なると過去にも気温が高くなることがあったが、今年は更に南北傾斜高気圧が重なり、三重の高気圧に日本列島は覆われ晴天が続いたため気温が上がることになった。梅雨の期間がほとんどなかったことも晴天が続き温度を高くしている。土の中の温度も40℃に近づき野菜の高温障害を起こした。


 2.高い海水温

 日本海、大平洋、瀬戸内海の海水温が好天により高くなって陸地の温度を高くした。


 3.地形と気圧配置によってフェーン現象が各地で起こり、特に山に囲まれた盆地にある丹波市柏原では、41.2℃(2025.7.30)を観測した。

 その後、群馬・伊勢崎で41.8℃(2025.8.5)静岡41.4℃(2025.8.6)と記録を出した。


 気象学者によると、産業革命前の状態では、1万1472年に1回起こる気象現象であるが、大気中の炭酸ガス濃度が高くなった現在では、31年に一回起こる確率になっていると解説した。


 例年とは、1991年から2020年までの30年間の平均気温のことだ。

 30年間は、基準より-0.84℃から+0.65℃の範囲で低くなったり高くなったりして平均気温となっている。


 1990年が、それまでと比べて比較的気温が高かったのでその後の3年間は続けて年平均気温は低下したが、その後は2年続けて年平均気温が低くなると次の年は気温が高くなり、2年続けて気温が高くなると次の年は気温が低くなるように、上がり下がりを繰り返して、気候は自らを安定させようとしてきた。


 変化が見られたのは、2017年頃からだ。

 2015年、 +0.39℃

 2016年、 +0.58℃ と二年続けて年平均気温が上昇したので

 2017年は、-0.05℃ と前年と比べて-0.63℃低下して気温の上昇を引き戻した。


 だが、気候が自らを安定させようとする抵抗もここまでだったらしい。

 2018年、+0.38℃

 2019年、+0.62℃

 2020年、+0.65℃ と3年続けて年平均気温が上昇したので、気温を低下させようとするが、


 2021年、+0.61℃ で前年と比べて-0.04℃低下

 2022年、+0.60℃ で前年と比べて-0.01℃低下と引き戻しは弱くなっている。

         1996年の-0.84と比べると格段に引き戻しは弱くなっているの    

          だ。そして、

 2023年、+1.29℃

 2024年、+1.48℃ と年平均気温は、急上昇し始めた。


 2025年の年平均気温は2026年の1月に発表されるが、かなり高いものとなるだろう。

 2025年6月の平均気温は、平年比 +2.34℃

 2025年7月の平均気温は、平年比 +2.89℃

 2025年8月の平均気温は、平年比 +2.36℃

 と、

 高温であった。


 9月から11月まで、気温が高いと予想されているから、今年の年平均気温は例年に比べてかなり高いものとなるだろう。


 来年の話になるが、2026年の年平均気温が、1℃近く下がらないとしたら、日本はティッピングポイント(tipping point)を超えたと言えるかもしれない。


 気候の転換点といえる。ティッピングポイントとは、例年の基準でいえば1℃以内の小さな変化から一転して、高温の状態を保ち続ける、急激かつ不可逆的に温度が変化する時点をさす。

 閾値とか臨界点ともいう。


 そうなると、2023年から2025年の年平均気温がベースとなって気温はどんどん上昇することになる。


 今年の異常な気温は、最初に挙げた3項目によって説明されるが、高気圧の配置とか偏西風の蛇行の位置関係によってはそれほど気温が高くならない年も出てくるだろう。だが、海水温の上昇だけは、なかなか下げることが難しいので今後も気温は上昇するだろう。

 水は比熱が高い物質であり一度温まってしまうと冷ますことが難しい。海水温を下げるためには、氷期になるか、大規模な火山噴火が続き太陽光を遮るしかない。


 或いは、シンギュラリティによって大気中の二酸化炭素を強力に排除する装置を完成させるしかないが、それはそれで低緯度地域と高緯度地域の二酸化炭素戦争を引き起こすだろう。大気中の二酸化炭素濃度が低下して北極海が氷に閉ざされては、北極海航路が使えなくなりロシアは二酸化炭素の排出促進に動くだろう。


 気象学者は、2100年頃、平均気温は4.0℃上昇すると予想を立てていたが、最近の見解では、2070年頃に4.5℃の上昇になるかもしれないと言い出した。世界の国々が自国の国益だけを主張して戦争をしているようでは、二酸化炭素濃度の上昇を抑えることはできない。あとわずか、40年程度で気候は激変するかもしれないのだ。


 特に、ヨーロッパは4.0℃上昇する間に、寒冷化という激変に見舞われることになる。2.0℃上昇すると大西洋子午面循環(AMOC)が崩壊することで欧州が寒冷化するのだ。海氷がオランダ辺りまで覆うことになる。


 AMOCは、草津温泉の湯もみガールズと思えばよい。チョイナチョイナと地球の海水を撹拌して暖流を北欧に届けている。それが止まれば、暑い地方はますます暑くなり、寒い地方は増々寒くなるのだ。


 気温約4.0℃上昇で温暖化のシグナルが勝つようになり、ヨーロッパは、旱魃と洪水の見舞われることになる。それが、2070年頃と予想が早まっているのだ。

 アメリカ北東部は洪水に見舞われる。トランプ2.0が生きていたら、なんと言い訳するだろう。棺の中でまた、バイデン大統領のせいにするのだろうか。


 ヨーロッパが、生き残るためには、生存可能な土地への移動しかない。それがウクライナからシベリアに続く中央アジアなのだ。ウクライナに勝たせてかつロシアを味方にしない限り、ヨーロッパの未来はないと言えるだろう。


 地球沸騰化で最初にティッピングポイントを通過するのは日本と地中海沿岸国かもしれない。北太平洋の海水温と日本海の海水温の上昇が著しいのだ。昨年まで海水表面の温度が30℃だったのは九州までであったが、今年は関東付近まで30℃になっている。


 東北地方の海水表面温度は、27度位だ。スルメイカの赤ちゃんの生存温度は18~23℃だ。ホタテは、23℃になると半数が死ぬ。

 海水温がどのくらいの深さまで及んでいるかが問題になるが、日本海では深海まで温度上昇の影響が出ている。


 遠くない将来、漁業は、陸上養殖、単一魚種の水族館を作ることになる。農業は、高温障害を起こしにくい作物に転作することになる。30年以内に限界集落になる自治体には、復興支援金は出ないことになる。洪水、旱魃は繰り返すことになるからだ。今後、5年間で政府は対応で忙しくなることだろう。







     










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